小児科医 福富悌氏

 新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言は解除されましたが、依然として新たに感染する人が後を絶たず、世界的にも収束していません。
 従来、コロナウイルスは家畜や野生動物などから、イヌ、ネコ、ニワトリなど多くの動物に感染し、軽症の呼吸器症状や下痢を引き起こすことが知られていました。私たち人間に対しては、4種類のコロナウイルスが分かっていて、風邪の10~15%はこれら4種のコロナウイルスが原因とされていました。冬季に流行し、6歳までにほとんどの子どもが感染するとされ、高熱が出ることもありますが多くは軽症です。
 ところが、時にウイルスが変異し重症化することがありました。2002年に中国広東省で発生し、同年11月から03年7月までに多くの国に広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスや、12年にサウジアラビアで発見された中東呼吸器症候群(MERS)ウイルスのケースです。
 今回の新型コロナは昨年末から世界中に広がり、多くの感染者を出しました。感染した人の80%が無症状か中等症で、20%が重症化するとされています。これらの重症化を左右する因子の全容はいまだ解明されていませんが、これまでの間にいくつかのことが分かってきました。ウイルスが免疫の中心的な役割を果たすリンパ球(T細胞)の数を減らすことや、リンパ球が減少しているのに免疫物質が過剰に作られることです。これに関係して血管炎性病変、血管閉塞(へいそく)・梗塞が報告されていることも、重症化の原因と考えられています。
 免疫物質が過剰になることは、子どもがインフルエンザウイルスに感染し、脳炎を発症する場合でも起こります。いずれ新型コロナに対する薬が作られ、予防接種ができるようになればある程度は防げると思いますが、今のところ完成していません。従って、私たちは感染を避けるのと同時に、個々の免疫力を高めておく必要があります。適度な運動、十分な栄養と睡眠が大切です。漢方薬の中には、インフルエンザウイルス感染に対する免疫力を高め、過剰な免疫物質の産生を抑制する作用を持つものがあり、新型コロナの重症化に対する効果も期待されると考えられます。(福富医院院長、岐阜市安食)