整形外科医 今泉佳宣氏

 前回、子どものロコモティブシンドローム(通称子どもロコモ)について紹介しました。子どもロコモとは、子どもの運動器の働きが低下している状態で、運動不足が原因とされています。こうした運動不足の子どもがいる一方で、低年齢でスポーツを始める子どももいます。低年齢からスポーツを始めることにより、国際試合で活躍する選手が出てくることは喜ばしいことですが、小さいころから過剰な練習を続けて、慢性的に運動器に痛みを持つ子どもがいるのも事実です。

 こうした、運動不足や運動過剰による子どもの運動器の問題を早期に発見し、対応する目的で、2016年4月から全国の学校で運動器検診を行うようになりました。

 運動器検診では、最初に家庭で問診票の質問に回答します。質問は6項目=図=あります。①背骨が曲がっている②腰を曲げたり反らしたりすると痛みがある③腕、脚を動かすと痛みがある④腕、脚に動きの悪いところがある⑤片脚立ちが5秒できない⑥しゃがみこみができない。これら六つの項目について「はい」、または「いいえ」で答えることで、家庭で子どもの運動器の状態をチェックします。

 次に問診票の回答を踏まえ、養護教諭は体育・部活動の指導者と連携して体育・部活動といった学校生活における子どもの運動器の状態を観察します。こうして家庭と学校での二重のチェックで、生徒の運動器の問題点を整理し、気になる点を学校医に伝えます。

 そして健康診断の時に、学校医は実際の生徒を前にして側弯症(そくわんしょう)(背骨が曲がった状態)がないかどうか診察をします。さらに学校医は四肢(腕や脚)の状態について、必要に応じて問診や診察を行います。

 学校医によって運動器に異常があると判断された場合は、整形外科への受診を勧めます。整形外科では改めて問診や診察を行い、必要に応じてX線撮影やMRI(磁気共鳴画像装置)検査などを行って診断をします。整形外科医は「異常なし」、ないしは「異常あり」と評価し、「異常あり」の場合はさらに「経過観察でよい」、または「治療を要する」と評価し報告書に記入します。この受診結果報告書は生徒を通じて学校へ提出されます。

 学校での運動器検診を通して側弯症や過度の運動による運動器疾患が判明した場合は、整形外科へ定期的に通院することが必要です。しかし運動器疾患がなく、いわゆる運動不足からくる子どもロコモが判明した場合は、普段からストレッチなどの運動を行うように、家庭や学校で指導をすることになります。

(朝日大学保健医療学部教授)