放射線治療医 田中修氏

 こんにちは。先週はバレンタインデーでしたね。欧米では一般的に、恋人同士でお花やカードなど贈り物をする日として定着しているそうです。さて今回は、女性の罹患(りかん)率トップの乳がんについて話そうと思います。

 乳がんで、最も生存率に関わってくるのは、どの段階で発見・診断されたかです。言うまでもなく、早期に発見された方が治りやすくなります。多くの市町村が40歳以上の女性に対し、乳がん検診の費用の一部を公費負担しているので、少しの自己費用で検診を受けることができます。詳しくは、お住まいの市町村に問い合わせてみてください。

 マンモグラフィーは2年に1度、受診することが国から勧められています。視触診のみの検診では、死亡率減少効果が示されていないため、マンモグラフィーが必要です。超音波(エコー)検査による検診もありますが、その有効性についてはまだデータが少なく、分かっていません。マンモグラフィーで要精密検査になった場合は、必ず受診しましょう。

 精密検査では、MRI(磁気共鳴画像装置)や生検(針で組織を採取)が行われます。生検の結果、乳がんと診断されると治療に入ります。治療方法は多岐にわたります。

 最近は乳房を温存した手術が多いですが、腫瘍が大きい場合は、乳房を全摘することもあります。また、手術の前に抗がん剤治療などをする場合があります。手術後は再発のリスクを下げるため、基本的にすべての患者さんで放射線治療を行います。図1の赤い部分は、放射線が照射されている範囲です(乳腺全体に照射)。放射線治療は、土、日曜日を除き、続けて25日間行います。腫瘍が大きい、ホルモン療法に適応がある場合は、放射線治療後にホルモン療法も追加します。

 最近は、早期に発見される乳がんが増えてきました。しかし、まだ日本では検診普及が十分ではありません。乳がんは体の表面に近いところに発生するため、自分で観察したり、触れたりすることによって発見できる可能性が高いがんです。乳がんの60%以上は自己検診によって発見されています=図2=。皆さんも、月に1度は定期的に自己チェックを行い、少しでも異常があったら、医療機関を受診するようにしましょう。

(朝日大学病院放射線治療科准教授)