小児科医 福富悌氏

 新型コロナウイルスの感染者はこのところ減少していますが、収束には至っていません。現代でも人類がウイルス感染症に脅かされるということが今回の件で明らかになったと思います。

 このような事態に対処するためには、病原ウイルスをいち早く同定してワクチンを製造し、集団予防を図ることが必要ですが、安全性の検討を含めた対応には時間がかかっていますので、まずはうがい、手洗い、3密を避けるといった対応が大切です。

 ウイルスに対して、薬や予防接種が無い時代は、漢方薬の服用が主流でした。漢方薬の役割として、高血圧、糖尿病の人や高齢者らハイリスクと考えられている人の感染予防、感染した人の重症化防止の二つが考えられています。最近の研究で漢方薬には、ウイルス感染に対する自然免疫を活性化させる作用、臨床症状を軽減して重症化を防止する作用が徐々に解明されてきました。

 インフルエンザでは、一部の漢方薬は抗ウイルス剤と同等の効果が示されています。補中益気湯(ほちゅうえっきとう)はサイトカイン(ウイルスに感染したとき生体を守るために体内で作られるタンパク質の一種)自体の産生を抑制すること、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)は免疫細胞機能を改善して過剰な炎症の予防をすること、葛根湯(かっこんとう)はサイトカインの産生を抑制することがそれぞれ分かってきました。麻黄湯(まおうとう)も免疫の過剰反応を抑える作用が考えられています。

 健康保険の適用外ですが予防投与として補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯(にんじんようえいとう)が良いでしょう。胃腸が弱っている人は四君子湯(しくんしとう)、六君子湯(りっくんしとう)、茯苓飲(ぶくりょういん)などを用いるのが良さそうです。もし感染したら葛根湯、麻黄湯を服用し、高齢者や倦怠(けんたい)感が強い人は麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)が良いと思われます。新型コロナウイルスの院内感染を荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)で防いだという報告もあります。

 ウイルス感染症でワクチンや薬がない場合は、漢方薬で免疫を高めておくことも対策の一つです。実際の服用については専門の医師や薬剤師に相談してください。

(福富医院院長、岐阜市安食)