皮膚科医 清島真理子氏

 暖かくなって日中には汗ばむ日もありますね。あなたは汗で困っていませんか?

 はじめまして。今回からこのコーナーを担当する清島です。今日はちょっとうっとうしいけれど、人の体に大切な「汗」についてお話しします。

 汗は皮膚の中の汗腺で作られて、汗管という管を通って皮膚の表面に出てきます。汗腺にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺がありますが、主にエクリン汗腺が全身の汗を作ります。交感神経から汗を出す指令が出て汗が作られます。1日に700~900ミリリットルの水分を汗として出すことで体温を調節し、皮膚の表面をちょうどよい湿度に保ちます。また、不要になった塩分や乳酸、金属などを排出してくれる、人の体にとってなくてはならないものなのです。エクリン汗腺はひとりの人の皮膚に300万~400万個あるといわれています。全身のほとんどに分布していますが、最も多いのは手のひら、足の裏と脇です。

 汗の病気には汗が多過ぎる病気と少な過ぎる病気があります。日常生活に困るほど多過ぎる病気は「多汗症」です。逆に汗が出ない「無汗症」や汗が少ない「減汗症」も困ります。

 そこでまず、多汗症についてお話ししましょう。全身の多汗症と、脇や手のひら、顔など、体の一部だけの多汗症があります。他の病気や薬や食べ物で多汗になることもありますが、はっきりとした原因が分からないことも少なくありません。

 その中で「脇の多汗症」についてお話ししましょう。誰でも汗をかきます。夏の暑い日や運動した後など、脇はよく汗をかくところですね。シャツの脇の部分に汗染みができて人目が気になったり、脇から汗がツーっと流れ落ちる不快感のために勉強や仕事に集中できなかったりという症状は「脇の多汗症」の症状です。それでは表を使って「脇の多汗症」のチェックをしてみましょう!

 表の中の6症状のうち2項目以上当てはまり、多量の脇汗に6カ月以上悩まされているなら、それは体質ではなく「脇の多汗症」という病気かもしれません。

 どうでしょうか? 「脇の多汗症かも...」と思った人は皮膚科専門医に相談しましょう。脇の多汗症と診断されると、いくつかの有効な治療があります。そのお話をしましょう。

 脇に塗る塗り薬には汗を出す指令をブロックする働きのお薬(エクロックゲル)があります。ほかに汗の出口をふさぐ働きの塗り薬(塩化アルミニウム水溶液)もあります。汗を出す指令を伝える神経に作用して汗を減らす注射(ボトックス)もあります。これらの治療で効果のない時には、汗を出す指令を伝える神経を手術で切断する方法もあります。

 症状の程度や、治療の安全性、ライフスタイル、治療の費用などを担当の先生からよく聞いて、あなたに合った方法を選ぶとよいと思います。

(岐阜大学名誉教授、朝日大学病院皮膚科教授)