新聞の切り抜きで埋まる図書館の壁=東京都目黒区、都立国際高校
教員と司書が連携した効果的な図書館での授業=同

全国公民科社会科教育研究会事務次長・都立国際高校主任教諭 宮崎三喜男

 NIEを推進していくためには、授業だけでなく、さまざまな連携が重要である。本校では学校図書館と強く連携を図っており、その一部を紹介したい。

 本校の図書館の壁には多くの新聞の切り抜き記事が掲示されている。テーマは18歳選挙権、夫婦別姓、国際情勢、大学入試情報などバラエティーに富む。そして、どれも高校生にとって興味・関心が高い記事ばかりである。このような取り組みを始めてから、図書館に置いてある新聞を読む生徒が増え、またテーマごとに分類してあるスクラップファイルを貸し出してほしいとの要望が出てきた。

 筆者は授業で扱うテーマを司書の方と事前に相談し、新聞スクラップファイルを作成していただいたり、時には図書館にて授業を行うこともある。以前は「先生、○○ってどういうことですか?」という質問が多かったが、最近では「新聞に△△って書いてあったんだけど、もう少し詳しく教えてください」というように変化が見られている。さらには司書が毎日、「○月○日の新聞記事から」として生徒の目を引く記事を更新して掲示をしたり、廊下のパブリックスペースに複数の新聞を配置し、自由に新聞を閲覧・比較ができるように整備するなど通常授業の下支えとなる環境づくりを意識している。

 そのような環境の中、政治・経済の授業と学校図書館の視点を融合した主権者教育の授業を実施した。授業の冒頭、筆者が、「どのような社会で暮らしたいか、どのような社会を作りたいかを考えることが主権者教育である」と説明をした。その後、「憲法」「雇用」「社会保障」「女性の活躍」「教育」などの九つの課題をダイヤモンド型ランキングの手法を用いて、グループごとに優先順位を考えさせたのちに発表させ、最後に九つの課題の一つを探究レポートとして課題を提示する授業デザインである。

 授業全般は教員が主導するが、後半の探究レポートの書き方については司書が担当をした。そこでは、レポートを書くにあたり、参考文献の探し方やメディアリテラシーについて話をした。情報の信頼度について、個人のSNSは低いことや、情報の新しさと確実さは相反することなどを説明し、また信頼度の高い情報については、新聞や公官庁のウェブサイトなどをあげ、「一つの情報だけでなく、違う情報と比べることも必要」とレポート作成の方法について的確なアドバイスをしてもらった。

 授業では、教員と司書が事前に授業デザインについて意見交換をしながら作りあげたが、その中で教員が指導すべきところ、司書が話すべきところのすみ分けや、事前に何を準備しておく必要があるかを確認しておいたことがとても有効であったと思われる。中でも、「教室でもできるが、図書館でやった方が効果的だ。教員が話すこともできるが、司書が話した方が効果が高い」という視点は、実際の授業を担当している教員と図書の専門家である司書との話し合いを行ったからこその結果であった。

 インターネットが浸透し活字離れが進む若者文化の中で、「新聞を読もう」と言ってもなかなか子どもたちは新聞を読もうとしない。しかしながら、授業方法や図書館との連携を図るだけで、生徒が新聞を読む機会は格段に増加することがわかった。今後のNIEは授業の改善と図書室との連携が鍵になると考える。