今年の決意の漢字を発表する6年生=山県市東深瀬、富岡小学校
6年生の1年間をまとめた新聞

見出し、読み手引き付ける

県NIEアドバイザー・奥田宣子山県市立富岡小教諭

 間もなく、6年生の子どもたちは、中学校へ進学という大きな節目を迎える。そこで、ことし1年に対する思いを漢字1字で表現し、全校に向けて決意を伝え、この3学期を歩んでいる。

 1月から始まった3学期。それは本年度のまとめの時期であり、6年生の子どもたちにとっては、小学校生活を締めくくる大切な時間である。富岡小学校の6年生は、感謝を伝える3学期にしたいと、合唱・言葉・奉仕・レクリエーション・学習の五つの卒業プロジェクトを立ち上げ、それぞれの立場で、仲間や学校に、感謝を伝える活動を工夫し、充実させている。

 言葉プロジェクトは、6年間を振り返るとともに、中身の濃い6年生の1年間を言葉でまとめた。学年みんなの思いを吸い上げるために、子どもたちは新聞形式でまとめることにこだわった。日常に新聞がある子どもたちは、新聞形式でまとめることによって、キーワードがはっきりすることに気付いている。実際の見出しは、「仲間と創った宝物」「姿で示すことの大切さ」「自覚をもち、やり切った」「中学校への架け橋」「夢への一歩」などと、この1年を見事な言葉で表現した。見出しは記事の内容を象徴し、読み手を引き付ける魅力がある。一番伝えたい思いを見出しで表現し、レイアウトを工夫しながら、限られたスペースに思い出深い記事を書いた。どの新聞も、一人一人が経験した事実を振り返り、その中で抱いた熱い思いと、卒業までの志が詰まった温かい記事で埋まっていた。

 言葉は人の気持ちを伝える最善の手段である。しかし、伝え方は多様にあり、受け手にどう伝わるかが大切である。子どもたちは今、小学校生活を振り返り、感謝を伝える言葉を文や声に出して伝えようとしている。合唱の歌声も、その一つであり、合唱プロジェクトを中心に、小学校生活を共に歩んできた仲間と心を伝える姿を目指して練習に励んでいる。

 そんな中、朝の会の1分間スピーチで、子どもが「思い出を胸に成人へ~14年前のタイムカプセル掘り出し~」という見出しの記事を選び、「小さい頃に埋めた物が14年たつと大切な思い出に変わる。タイムカプセルは、一瞬で当時に自分たちを戻してくれる」と発表した。すると、「僕たちもやってみたい」「将来、どんな大人になっているのかなあ」と、仲間の選んだ記事とスピーチの内容から、未来の自分に大きな夢を膨らませた。図画工作の授業で、「12年後の自分」をテーマに、管理栄養士になって料理している私など、12年後のイメージを立体に表現したこともあり、この記事に敏感に反応したのだ。

 6年生の子どもたちは、自分の将来に期待している。この思いを大切につなげていくことが必要である。これから出会う多くの人、初めての環境、緊張感の中で、かけがえのない経験を積み重ね、夢を膨らませてほしい。そんな子どもたちは今、タイムカプセルに夢を乗せて、未来の自分に届けようとしている。