原田結花 高富中教諭 命の記事で意見交換
細江隆一 美濃加茂西中教諭 批判的な視点も大事
奥田宣子 富岡小教諭 文を書く力を育てる
-県NIEアドバイザーとして活動する原田結花教諭(山県市立高富中)、細江隆一教諭(美濃加茂市立西中)、奥田宣子教諭(山県市立富岡小)は、20年から25年近い実践経験がある。これまでで印象に残っている体験はどんなことか。
原田 感動したのは、国境なき医師団をテーマにした6年生の道徳の授業。子どもたちは、新聞で読んだ命についての記事の話を次々に語り出した。私が準備した説話もいらないほど素晴らしい授業になり、新聞で授業をして本当に良かったと思った。
細江 投稿を中心にやってきたが、生徒の投稿を読んだ人から学校へ、感動してお礼の手紙を添えた手作りの作品が届いたことが何度かある。生徒らは読んでもらい、反響を頂いて、とても喜んでいた。
奥田 おととし熊本地震があったとき、新聞を読んだ子どもたちの中から「何かしたい」という言葉が出て、折り鶴より本当に必要なものをと、暑い時季に合わせて全校でうちわを作った。情報を通し、相手意識に立って考えることができた。
-苦労もあったのでは。
原田 新聞で学ぶ機会があれば、子どもたちはどんどん学び、発展していくが、かつては、その授業で漢字は覚わるか、教科書の内容に沿っているかと言われた。
奥田 NIEはプラスアルファ、わざわざやる仕事と捉えられることもある。
細江 NIEの授業はどの単元なのか、生徒にどういう力を付けたいのかと指摘を受け、自分なりに苦しみ、格闘しながら、カリキュラムに結びつける工夫をしてきた。
-そうした経験を踏まえ、今、課題と考えるのは。
原田 子どもたちは、会員制交流サイト(SNS)で短い言葉をやり取りするのが普通になり、話をうまく聞き取れず、親子の会話もできなくなっている気がする。新聞は、じっくり話し合う場をあえて作るという、これまでと違う役割を担っている。
細江 その点では、日本新聞協会の「いっしょに読もう!新聞コンクール」は、良いきっかけになる。僕は夏休みの宿題にしているが、中には、親の意見を聞いてもうのみにせず、私は違うと批判的な視点を持つ子もいる。それは大事なこと。ただ、新聞を取ってない家庭もあり、用意して配る必要がある。
原田 NIEの環境という意味では、新聞配備のための地方財政措置をきちんと生かして、どの学校図書館にも新聞を置き、それを使った授業を行う機会を整えてほしい。
細江 学校図書館賞も、図書館に必ず新聞があることが前提となっている。確実な配備は、大きな課題。
奥田 文を書く力はいきなりは育たない。まず情報を的確に伝える新聞の、無駄のない文に触れさせることは大事。SNSに「この映画面白くない」とあったら、否定なのか疑問なのか。言葉足らずの文では思いが伝わらず、取り返しのつかないことで人間関係を壊すかもしれない。新聞は、単語では足らないと伝えていく教材でもある。
原田 中学では授業で主張作文を書くが、書くための主張でなく、日ごろ疑問を持ち考えていることを意見として主張するという学びが大切。教員研修の中にNIEが位置づけられるとうれしい。
-最後に、今後の夢を。
原田 山県市は新聞活用教育の先進市。小中高が連携し、市全体で新聞を読む教育に取り組んで、子どもの未来を広げたい。山県市をNIEの市として発信したい。
細江 子どもの参観で行った八百津町立和知小学校で、「新聞を読もう」の掲示を見つけた。実は、広く知られていないだけで、NIEを行っている学校や個々に取り組んでいる教員はいる。ネットワークを作って情報交換することが大事ではないか。情報を集め、活用するネットワークの必要性を感じている。
奥田 新聞は、記事自体がキャリア教育になっている。限られた学校生活だけでなく、視野を広げるきっかけとして活用し、夢を抱き願いを持って頑張れる子どもたちを育てたい。
-ありがとうございました。(聞き手・内木いづみ)