新聞記事を掲示している壁面=山県市高富、高富中学校
新聞記事を選ぶFくん

県NIEアドバイザー・原田結花山県市立高富中教諭

 「あなたの学校図書館には新聞がありますか」。そのような広告記事を最近よく目にします。文部科学省も予算化しており、あとは自治体次第ですが。小学校では1紙、中学校では2紙、主権者教育の重要性が高まる高校では4紙の配備を目指しています。

 ある高校で、新聞活用教育を行うにあたり、新聞とのかかわりを調べたところ、30人ほどのクラスの2人が家庭でも、学校でも全く新聞を手に取ったことがないと答えたそうです。

 みなさんの学校では、どこかに子どもたちが新聞を読んだり、手にとって話す場面があるでしょうか。義務教育の中で、新聞に全く触れないという環境は、大人の側で変えていく必要があると思います。

 私の勤務する中学校では、新聞を掲示する壁面を一番生徒たちの通る昇降口に確保しています。ここの新聞の掲示は、特別支援学級「ふれあい学級」に所属する3年生のFくんによって、維持されています。放課後、帰る前の時間に前日の朝刊から1面の記事や自分の見つけたハッピーニュース、岐阜県にゆかりのある記事などを、ラインを引いて掲示しています。

 春にリトアニアの方たちが学校を訪問されるにあたり、全校の皆さんに、杉原千畝(ちうね)さんの特集記事の連載を集めて掲示しました。そのおかげで、リトアニアのことを本人も学校の皆さんも関心を持つきっかけになったと思います。

 生徒は一人、二人と立ち止まり、結構、新聞を見ている姿があります。1面の記事だけでも、1週間、読むようにすれば、社会につながるきっかけになるかもしれません。

 彼の使っている新聞は、学校の職員室の前日の新聞を使っています。2紙あるので、1面の比較もできます。Fくんは「みんなの役に立てるのがうれしい」と、常日頃言っています。このボランティアによって、本校の新聞活用の一端は保たれています。

 みなさんの学校でも、掲示板で空いているところがあれば、子どもの力で新聞を掲示したり、切り抜きのファイルを置いたりしませんか。不登校の生徒や相談室登校の生徒が学校のボランティアとして、新聞収集にかかわることもよいのではないかと思います。

 岐阜西中学校は、朝の会の前の5分間、全校で新聞タイムを行っています。コラムをひたすら書き写し、書く力だけでなく、社会に目を向け感想を持つこともできるようになっているそうです。学校ぐるみのこうした活動ができるのはうらやましいことです。

 でも、新聞の環境はどこからでもアプローチしていくことができます。

 新聞ボランティアは、教師でも生徒でも、保護者や地域の方でも、どこからか切り口を見つけてできそうです。その可能性を探っていきたいです。