国語科ゾーンには新聞1週間分が並び、生徒は毎日、新聞に親しむことができる=岐阜市柳津町高桑西、岐阜聖徳学園大付属中学校
首里城焼失の記事に関連し、白川郷火災に備えた放水訓練の記事を取り上げた授業=同

 昨年度からNIE実践校として新聞活用に取り組んでいる岐阜聖徳学園大付属中学校では、全校生徒の身近に新聞を位置付ける環境を整え、新聞を使った授業カリキュラムの実践や朝活動を継続してきた。当初、記事の要約に手いっぱいだった生徒らが、次第に多様な記事に関心を持って自説を書いたり、要約をまとめたシートを調べ学習の資料として理解を深めるなど、自発的に新聞を活用。視野の広がりや情報量を吸収する力の伸びを見せている。

 同校は、生徒が各教科の専門教室に移動して学んでいる。国語科ゾーンには多種類の新聞1週間分を置くほか、記事に添えた生徒の意見や、新聞を分かりやすく紹介する掲示が並ぶ。国語の授業を受ける生徒全員が毎日、新聞を目にすることができる環境だ。

 実践の中心になった国語科の芥川千里教諭は1年目、要約の宿題を毎日出した反省があると振り返る。後日、生徒から「日課としてするのは負担」と聞き、生徒、教員の両者が無理のない頻度、分量で進めるこつをつかんだ。「新聞を1週間分並べると、情報の伝え方の違いや時事を巡る経過に気付く姿も目立つようになった」。日ごとに詳細が更新され、関連したニュースを扱う新聞の特性を生かした実践にも、一定の成果を感じた。教科ゾーンに新聞を使った学習を公開することで「他学年の関心も引き出す効果が期待でき、より多くの生徒が『自分だったら○○と考える』と仲間と意見を交流する場づくりになった」と話す。

 2年生が国語の授業で、首里城の火災の記事を読んで感想を発表した。「敵を防ぐ目的がある城の構造、高台という立地を変えることは難しいが、防火設備が最優先」「木造で、沖縄独特の塗料が火勢拡大の原因とあるが、復元した文化財なので一概にその塗料がだめだとは言えない」など、生徒らは安全か伝統か、自分の立場を示して意見を述べた。発表の後、芥川教諭が、ある生徒が白川郷の小屋全焼の記事に関し、数日前に一斉放水訓練を実施した記事を見つけたと紹介すると、生徒らの関心は一気に身近に。同じ世界遺産を持つ県の取り組みについて、考えを深めた。

 同校では新聞の社説を読み比べ、根拠をもとにして書いたり、論じ方の組み立てを参考に説得力のある文章について学んだりする取り組みも進める。数種類ある学習教材を自分の興味に従って選択する「パッケージ学習」では、調べたデータや資料を貼り付け、説明を添えて新聞の形に整理。生徒の希望で、家庭が新聞を取るようになるなど、新聞を読む習慣が身に付いてきた生徒も多い。

 芥川教諭は「自主的に記事を要約したり、信頼できる情報を新聞から探すようになった」と、NIEによって生徒の学ぶ意欲や情報を見極める力の高まりを感じ、今後も「公民の授業などでの活用を検討中」と意気込む。