NIE実践9校が取り組みの成果や課題を報告したセミナー=岐阜市柳津町高桑西、岐阜聖徳学園大羽島キャンパス

 岐阜県内の小中学校、高校計9校が日本新聞協会のNIE実践校の指定を受け、それぞれが特色ある独自の取り組みを展開している。岐阜市柳津町高桑西の岐阜聖徳学園大羽島キャンパスで開かれた県NIEセミナー(県NIE推進協議会主催)では、各校の実践者計11人が本年度の活動を報告。県NIEアドバイザーや協議会員ら約20人と意見を交わした。新学習指導要領の順次実施を控え、新聞活用をどう進めるか。NIE学習の開発や課題について考えた。

 藤井德行会長(同大学長)は「新聞は知性の始まりであるとの意識付けが大切」とあいさつ。2年目の継続校は▽スーパーグローバルハイスクールの地域活性化プログラムと連動した新聞活用(斐太高)▽教科ゾーンで記事の要約文や紙面の構成を紹介し、全校生徒に共有(岐阜聖徳学園大付属中)▽紙幣刷新や増税などの記事を既習内容の学び直しに活用、新聞愛好会の立ち上げ(羽島市立桑原学園)-など児童生徒の実践内容を発表、今後の展望や課題を示した。続いて、新規校6校も現況を報告した。

 各校の活動について県NIEアドバイザー3人が助言した。原田結花教諭(山県市立高富中)は、「新聞を使った学習の面白さを会員制交流サイト(SNS)や新聞への投稿などを利用して他の高校へ発信、拡散してほしい」と提案。細江隆一教諭(川辺町立川辺中)は、「参観日に保護者や地域住民に、製作した新聞などの作品を見てもらい、褒められることで、生徒らは自己肯定感が高まる」とNIE実践の積み重ねを通じて、子どもの成長を認める重要性を強調。

 奥田宣子教諭(高富中)は、「まず教師が新聞を読み、視野を広げて教材研究に役立ててほしい。同僚を巻き込んで継続的な実践を」と話し、教師仲間をつくる意義にも触れた。

 報告後は、「深い学び」を実現するための新聞活用をテーマにしたグループ討議を行った。「校内研修などで全教員が新聞から題材を探す場を設ける」「社会的な課題を新聞で知り、地域の課題を掘り起こして解決する活動は学びの質を高める」「学校との連携記事があると面白い」など、新聞活用の可能性や新聞社と協力した取り組みを期待する声もあった。

 セミナー全体を振り返り、横山真一県教育委員会学校支援課課長補佐は「新聞を学習のきっかけや資料、評価活動として活用を」、長村覚県小中学校長会専任副会長(岐阜市立長良中校長)は「ネット事業の規模が拡大する中、NIEの意義は大きい」、折戸敏仁県高校長協会副会長(岐阜高校長)は「新聞を活用する柔軟な指導方法が求められる。実践者のネットワークを生かし、学び続けていく姿勢を持つことが大切」と提言。新聞社側は「大人がじっくりと新聞を読む姿を子どもや周囲に見せていきましょう」と話した。

新規校の報告内容

◆大垣商業高(大垣市) 川瀬ちさ紀教諭 永井里奈教諭
 アンケートにより、新聞を「全く読まない」という生徒が約75%という実態を把握。実践対象の1年生の各学級に1部ずつ配布し、朝活動を利用して新聞に触れる機会を創出した。1面記事の見出し、小見出しを毎日記録するほか、学年集会などで記事を読んだ感想を発表する取り組みを始めている。

岐阜高(岐阜市) 井上智也教諭
 単元のまとめやレポート作成で新聞を活用。現代社会の授業では、新聞記事を使った調べ学習のほか、2紙以上の記事を読み比べて考えたことをポスターセッションで発表する活動に取り組んだ。家庭科では、「家族・高齢者」に関連した新聞記事をもとに、生徒が社会問題について考えを深めたり、ディベートを行った。

旭ケ丘中(関市) 西尾鹿正教諭

 情報委員会の活動にNIEを位置付けて実践の幅を広げている。毎朝、生徒が新聞記事をコピーし、自分の意見を書き添えて、全校生徒が通る渡り廊下の一角に掲示。昼の放送で、記事紹介や内容に関するクイズを出題して、新聞のおもしろさを啓発している。国語科では、記事の視写を通して、語彙(ごい)を蓄えたり、文章の書き方を学んでいる。

南中(大垣市) 飯沼裕貴教諭

 今年は、3年生を中心に新聞活用を試みている。新聞好き有志10人で新聞普及委員会を発足。切り抜いた記事に独自の見出しを付け、新聞コーナーに貼り出すなど目を引く工夫をした。ふるさと学習の一環で、まちづくりの記事を読んだり、地域おこしに協力する同市民に取材をして、新聞記事を作成した。(発表者は堀耕平教諭)

富岡小(関市) 青山奈緒教諭
 新聞を購読する家庭が全体の4割という実態に応じ、購読家庭から持ち寄った新聞を集めたコーナーを設置。どの児童も自由に読むことができる環境を整備した。4年生では、気に入った見出しに投票する学級活動を位置付け、児童が楽しみながら学べる実践を行ったほか、国語の授業で身近な新聞を使い、理解が深まったという児童の反応を引き出した。

谷汲小(揖斐郡揖斐川町) 香田明彦教頭
 机や椅子を置いたサロン風の「NIEコーナー」を新設し、壁面には保護者や地域住民が紹介された記事を掲示。参観日にNIEの授業を公開したことで身近な大人と記事について意見を交わすきっかけになった。今後は各教科での系統的な新聞活用や家庭教育の視点から、記事を話題にして親子の会話が広がるような取り組みに挑戦したい。

継続校の発表内容

斐太高(高山市) 日比野恭一教諭
 スーパーグローバルハイスクール事業と連携し、外国人観光客が多い高山市の災害対応支援を考える学習で新聞を活用。地域住民と観光客両者ともが被害を受けた北海道胆振東部地震を取り上げ、北海道新聞社に電話で取材、関連記事を収集し、当事者意識を持って探究活動を行った。AO入試のレポート作成に記事を使う生徒が現れるなど、進路選択に活用する可能性も見つかった。

岐阜聖徳学園大付属中(岐阜市) 芥川千里教諭 西本崇志教諭
 全校生徒が授業を受ける教科ゾーンで、実践を展開。1週間分の新聞を読み比べる環境を整えたことで、生徒は記事内容の変化に気が付いたり、共通点をもとに異なる記事を関連付けて読む力が育っている。1年目から続けてきた記事の要約が習慣化したこと、幅広いニュースや社説に興味を持って読むことが成果で、今後の活動に生かしたい。

桑原学園(羽島市) 井上智嗣教諭
 読んで面白かった記事にシールを貼り、生徒同士で社会の動きに関心を持てる工夫を取り入れた。小学生と中学生が合同で壁新聞を製作するなど、義務教育学校ならではの異学年交流の場を設定したことで、新聞を読む視点に広がりが生まれた。実践教諭が異動しても継続できる取り組みとして、事実と新聞社の考えを色分けして内容を読解する指導方法は効果的だった。