ふるさと学習発表会で歌舞伎の「白浪五人男」を披露する児童たち
鏡を見ながら歌舞伎の化粧をする児童=いずれも飛騨市河合町角川、河合小学校

 岐阜県飛騨市河合町角川の河合小学校は、地歌舞伎の公演に取り組んでいる。地域の自然や歴史、伝統文化に触れようと、2012年に始まったふるさと学習の一環。先月10日には、恒例の学習発表会が開かれ、5、6年生13人が、「白浪五人男」を保護者や地域住民らに披露した。今年も堂々と見えを切る子どもたちの姿に、会場から大きな拍手が送られた。

 河合町にはかつて芝居小屋「角川座」があり、明治中期から昭和30年代ごろまで地歌舞伎が盛んに行われていた。その後一時途絶えたが、2007年に芝居好きの住民らが集まり、伝統を復活、現在は、同町歌舞伎保存会(中矢正志会長)が年に1回公演している。

 同校では、地域の過疎化に伴い児童が減り続けてはいるが、運動会を地域ぐるみで開催したり、地元に伝わる盆踊りや歌舞伎、匠(たくみ)太鼓の体験教室を開いたりするなど、地域と一体となった教育に力を入れている。

 子ども歌舞伎は、同町歌舞伎保存会の全面的なバックアップのもと、夏休み前に演目と配役が決まった。今年の出し物は、日本駄右衛門や弁天小僧菊之助ら天下の大泥棒が勢ぞろいする「白浪五人男・鎌倉稲瀬川の場」。盗賊の5人衆のほかに捕り手の役人、三味線を使った語り、唄など児童の役割はさまざまだが、同校の野村俊巳教頭は「歌舞伎を嫌がる子は一人もいない。大観衆の前での発表を通して自分に自信を持ち、地域の素晴らしい伝統を誇りに思う子に育ってほしい」と話す。

 10月には、瑞浪市にある美濃歌舞伎博物館相生座の小栗幸江館長を講師に迎え、歌舞伎の歴史やせりふ回し、所作を熱心に学んだ。歌舞伎独特の化粧「隈(くま)取り」の講習もあり、児童たちは鏡を見ながらおしろいを塗り、資料を参考に目尻や鼻の周りに赤や青、茶の顔料でラインを入れた。

 5年生の児童は「化粧をすると別人になったみたいで、とても楽しい」と話した。

 学習発表会は地域の人たちも楽しみにしており、200人以上が会場の同校体育館に詰め掛けた。白浪五人男が登場する最大の見せ場では、粋な着物姿の児童たちが「問われて名乗るもおこがましいが、生まれは遠州浜松在」などの長口上を、会場全体に響く大声でよどみなく述べた。観客からは「よっ 日本一!」などと掛け合いもあり、大いに盛り上がった。

 盗賊役の6年生の児童2人は「せりふは七五調でリズム感があるので面白い。プロの歌舞伎とは違い、河合町は地域で引き継がれているし、子どもも参加できるので楽しい」と笑顔で話した。