新聞各紙を広げて、情報を読み手に伝える工夫を話し合う新聞部員=岐阜市加納大手町、岐阜大付属中学校
資料室に設けられた新聞コーナーで新聞を読む生徒=同

事実詳細、読みやすさ意識

 2017、18年度のNIE実践校に指定された岐阜市加納大手町の岐阜大教育学部付属中学校(504人、須本良夫校長)は、生徒による新聞作りの伝統がある。日刊の各紙を社会の情報を知る教材のみならず、新聞作りの参考にも利用。生徒たちは授業や取材などを通して、新聞という媒体の役割の理解を深めている。

 生徒会活動として新聞部会があり、25人のメンバーが各学年四つのクラスごとに年間約10回発行。B4判の片面カラーでクラスに配布するほか、校舎内の掲示板に貼り出す。

 記事のネタは学校行事や広めたい仲間の姿など。部会では部員が、3学年でつくる「縦集団」のグループになり、各紙を広げて新聞の特徴について話し合った。「具体的な数値を示し事実を書いている」「見出しだけで内容が分かる」「写真にも説明が付いている」。伝えるための工夫が次々と挙げられた。

 紙面に設けた「付中生HAPPYコーナー」は、部長の3年伊藤文菜さん(14)の提案。クイズやコラムなど、記者である部員それぞれの自由な発想で読む人を引き込む。

 同校卒業生の祖母から、当時作った新聞を見せてもらい、刺激を受けたという伊藤さん。「新聞は出来事が文字として残り、いつでも読み返して記憶を呼び戻すことができる。自分のクラスだけでなく、養護学級の生徒や警備員さんたちのことも話題にして学校を良くしたい」と話す。

 新聞を読む家族の姿を見て5年生ごろから読んでいるという部員の1年忍楽翔さん(12)は「頑張っている仲間の良さを見つけて書き、多くの人に知ってもらいたい。『新聞』と認められるような読みやすい紙面を作りたい」と意欲的だ。

 授業では、国語科と社会科で新聞を活用している。国語科では昨年度、1年生が次年度の新入生へ学校の特色を伝える紹介文を執筆。新聞記事の構成を参考に、読み手を意識した作文に挑戦した。

 2年生となった今年は、5月に大阪と淡路島の宿泊研修で学んだことを1人1ページの新聞にまとめた。

 川島由幹さん(13)は、民宿の経営者や漁師に話を聞いたり、働く現場を見たりして記事に。訪問した職場ごとにレイアウトの枠を色分けし、「お客様のより近くで」「辛(つら)くても届けたい」と、働く人の思いを見出しに取った。「見て聞いた事実をできるだけ詳しく具体的に出しながら、自分が思ったことを書いた」

 国語科の野々村琢磨教諭(35)は「各紙を読み比べることで表現のこつを学び、文章に個性が出てきた。国語科の課題だけでなく、日々の生活ノートまで生徒の書く力が高まっている」と手応えを感じている。

 同校でも、新聞を購読している家庭は全校生徒のうち約6割という。これまで新聞は図書館に置いていたが、開館時間が限られていたため、昨年度から資料室の一角に新聞コーナーを設置。生徒は休み時間や放課後も自由に出入りして読むことができ、政治やスポーツなど話題の幅も広がっている。

 社会科の前田佳洋教諭(38)は期待する。「生徒自身も世論の形成者になっていく。さまざまなメディアがあふれる中、新聞から情報を慎重に読み取り解釈する力を養ってほしい」