保存会員の手ほどきを受けながら、太鼓などの稽古に励む児童=揖斐郡揖斐川町房島、大和小学校
運動会で保護者や地域住民らに桂古代踊を披露する6年生=同(昨年9月)

代々の6年生が学び、運動会で披露

 チャンコ、チャン、チャン、スチャカ、チャン-。笛や太鼓、かねを鳴らしながら、シナイを背負った踊り手が勇壮に舞い踊る「桂古代(かつらこだい)踊」(揖斐郡揖斐川町重要無形民俗文化財)。毎年4月に大和神社(同町上南方)で奉納される舞で、約650年もの伝統を誇る。同町房島の大和小学校では、毎年6年生が地元の保存会から踊りを教わっている。

 桂古代踊は、室町時代に揖斐城を築いた土岐氏が戦勝を願い、士気を高めるために踊ったのが起源とされる。江戸時代以降は雨乞い踊りとして継承されてきたが、明治や昭和に入ると戦争などで何度も中断。戦後もしばらく途絶えていたが、1982年に現保存会の中心メンバーが当時の長老たちから技術を習い、復活させた。

 同校では、2001年から総合学習の一環で桂古代踊を学んでいる。保存会員による指導の下、児童は6月から週1~2回ペースで稽古に励み、9月下旬に開かれる運動会で踊りを披露する。踊り手が背負うシナイこそ大人用のものと比べて1メートル短いものの、それ以外の道具や披露する曲などは神社で奉納する形式と変わらない。

 本年度は6年生21人が挑戦する。稽古のスタートは曲を覚えるところから。音楽の授業で使われるような楽譜は無く、「チャンコ、チャン、チャン」「丹(たん)ツク、丹ツク、ス丹丹」などと何度も拍子を口に出して歌い、リズムと音階を体で覚える。こうした昔ながらの手法で、運動会当日には「道行き」「津きじ」など計5曲を横笛と太鼓で演奏しながら踊る。

 13日に行われた2回目の授業では、子どもたちが初めて太鼓とシナイに触れた。保存会員のお手本を見ながら太鼓を打ち鳴らした林賢新君(11)は「ばちの動かし方がすごく難しかった」と大苦戦だったが、「やりたいのは太鼓。やっぱりかっこいいから」と目を輝かせた。戸惑いながらも笑顔で取り組む児童の姿に、指導に当たる保存会長の服部均さん(67)=同町極楽寺=も目を細める。「子どもたちの上達ぶりには毎年驚かされる。この中から将来、一人でも地元に残って踊りを引き継いでくれる子が出てきてくれたらうれしい」と思いを語る。

 「17年間続けてきたことで、桂地区だけでなく大和小の伝統にもなりつつある」と、竹中健二教頭(53)。下級生たちは、6年生が運動会で踊りを披露する姿に憧れを抱き、特に5年生には「来年は自分たちが頑張る番だ」という自覚が芽生えるようになったという。「地域の伝統に直接触れることで、今日まで守り継いできた先人への尊敬の念、ふるさとへの愛着や誇りが子どもたちの中に育ってくれることを願っている」と語る。