新聞記事を元にしたディベートを行う3年生=岐阜市則武新屋敷、県立岐阜商業高校
過去の新聞を保存している部屋。自由に閲覧できる=同

信頼感ある情報で判断

 「昨年12月7日の新聞記事によると」-。昨年からNIE実践校として新聞活用に取り組んでいる県立岐阜商業高校の3年生が、国語表現の選択授業で、新聞記事を元にディベートを行った。生徒らはこれまで、新聞を通して社会への関心を深め、読解力や論理的な思考力などを身に付けてきた。ディベートでは、対立する立場で討論、多角的な視点で問題を研究した情報をもとに、客観的な根拠を示しながら、互いの意見を理解し、考えを深めるコミュニケーション力を学んだ。

 この日図書室に集まったのは、E組の生徒14人。国語科の丹羽沙也子教諭の指導で、8時限にわたり、模擬ディベートを体験したり、新聞の切り抜きや図書など多様な情報を使って説得力のある主張の仕方を学んできた。

今回のディベートのテーマは、対面販売の店舗に対して通信販売が台頭している状況を背景に、「買い物をするとき店舗と通販のいずれを利用すべきか」。代表2人がそれぞれの立場で主張した。持論を展開するだけでなく、相手の主張を覆すため、その場で新聞、図書、インターネットを調べて情報を収集。根拠となる新聞記事や研究者の出版物を示して、相手からの指摘に理路整然と反論した。

 客観的な統計データや多角的な考察、実際の経験談など、話は論点を明確にしながら進み、発表者は共に、よどみなく堂々と主張できた。

 ディベートを終えた通販チームリーダーの上原知之さん(17)は「新聞には、いろんな知識が詰まっていて、自分たちに足りない知識を得ることができた。通販の市場シェアが膨らむに従って店舗数が減ったという記事は、自分たちの意見の根拠。新聞はディベートの主張にとても役に立った」。これまでのNIE実践を通して「新聞には、興味あること以外にもいろんな記事がある。例えば北朝鮮のことなど、世の中の動きを知ることができた。新聞は、ネットと違い、昔のデータもきちんと残っている。それはとても意味が大きい」と、身近な存在となった新聞の魅力を語った。

 同校では、NIE実践校となった本年度、英語科と国語科を中心に実践を進めている。丹羽教諭は、「多くの生徒は、知的好奇心からというより、必要に迫られて新聞を読んできたかもしれない。しかし、興味が高まり、新聞への抵抗感がとても小さくなった。ディベートでも、インターネットより新聞が信頼感のある情報だという判断力を身に付けている。生徒たちは記事を読む力が増し、大事な情報を精査する力が付いた」と振り返る。

 図書館には、当日の新聞が置かれ、歴代の司書が担当している記事の切り抜きもある。隣の部屋には、過去の新聞が積まれ、廊下には、切り抜き自由の新聞が置いてあった。生徒が、自由に新聞を手に取ることができる環境は整っている。

 新年度は、実践校2年目の締めくくり。丹羽教諭は「新聞はいろんな読み方ができ、さまざまな教科の勉強につなげていける。次年度は、いろいろな教科からのアプローチを考えたい。進路指導部は夏休みに新聞を読もうと宿題を出し、生徒らは、さまざまな新聞へ投稿している。こうしたNIEの素地を、上手につなげていきたい」と意欲を燃やしている。