NIE活動への期待を話す藤井德行会長=岐阜市柳津町高桑西、岐阜聖徳学園大
指定校の取り組みの成果をまとめた20年分のNIE実践報告書

楽しさ、エネルギー実感 生きる力を養う「教材」

 県教育委員会や校長会、県内に拠点のある新聞・通信社でつくる県NIE推進協議会が本年、設立20周年を迎えた。この間小・中・高校延べ104校がNIE実践に取り組み、成果を報告書で発表。この夏には、初めて協議会主催の公開勉強会も催した。4代目会長を務める藤井德行岐阜聖徳学園大学長に、これまでを振り返りながら、今後の課題について聞いた。

 -20年の節目を迎え、いかがですか。

 私は6年間会長を務めてきたが、県内でNIE実践が20年間続いてきたこと自体を、高く評価したい。実践してきた子どもたち、先生方、学校、教育界に感謝したい。良いことばかりではなかったと思うが、NIE実践校の先生方は校内でNIEを盛り上げ、NIEアドバイザーが刺激を与え、組織が育ち、エネルギーと、何よりノウハウを蓄積してきたことが素晴らしいと思う。

 -本年度は会長がNIE全国大会に参加され、その後開催した公開勉強会も盛り上がりました。

 全国大会は、まず講演会が良かった。ノーベル物理学賞の天野浩さんが、小学生からの率直な質問にユーモアたっぷりに答え、五輪メダリストの吉田沙保里さんも、戦闘的なアスリートは冷静なものの見方ができるんだと教えてくれた。懇親会では、とても楽しく情報交換ができ、全国各地の先生方と話が弾んだ。NIEの持つ楽しさ、すごいエネルギーを感じた。

 公開勉強会は、東京、大阪から3人の講師を迎え、具体的な実践の工夫や、先進的な状況を聞いた。参加した皆さんが刺激を受け、今後の実践の方向付けになった。

 -NIEの盛り上がりを実感しますが、一方で若い世代が新聞を読まなくなっています。

 メディアが多様化し、新聞界には厳しい社会条件、物理的条件が重なっている。しかし、そんな中で、本当は、どうしても新聞を外せないのが教育だと考えている。小さいころから、漢字の形を見ながら情報を蓄えることがとても大事で、それには、新聞が一番だと私は思っている。新聞を読む教育地盤をつくっていくことは、親も含めて教育界の仕事だと思う。

 -会長にとって新聞はどのような存在ですか。

 僕は新聞で育った。祖母が新聞を丹念に読み、記事の内容をそしゃくして伝えようとする意欲のある人で、小さいときから"NIEアドバイザー"をやってくれていた。それ以来身近に新聞があり、大学の研究にも欠かせなかった。現在も、大学の会議で新聞の切り抜きを紹介し、授業でも新聞を使っている。

 読み、調べ、考えるという教育の基本的な入り口をきちんとするには、新聞はとてもいい教材だ。新学習指導要領の本旨である、与えられた情報をいかに自分でそしゃくして考え、新しい課題を見つけ解決する材料にして、本当の意味で生きる力を養うことに協力できる。高大接続改革でもいわれるが、社会に通用する継続性のあるものを知識として習得していく。繰り返すことも大事で、毎日新しい情報が掲載されている教材は他にない。

 -今後の県NIE推進協議会の課題は。

 教育の中に、新聞を残さなければいけない。デジタルも便利で大切だが、一覧していろんな記事が一度に見える新聞の価値は大きく、力がある。へこたれずにNIE活動を続け、1人でも2人でも実践者を増やせば、その人がまた増やしていってくれる。教師みんながNIEアドバイザーとなる、を目指したいと思う。

 -ありがとうございました。