「頭の知識 体の知識」をテーマに開かれた座談会=名古屋市熱田区、名古屋国際会議場
記念講演で「新聞は未来を照らす羅針盤」と語った天野浩さん=同

レスリングの吉田沙保里さん 児童らと新聞の意義語る

 教育現場での新聞活用を探る第22回NIE全国大会(日本新聞協会主催)が3、4の両日、名古屋市の名古屋国際会議場で開かれ、全国から教育、新聞関係者ら約2300人が来場した。岐阜県からは県NIE推進協議会長の藤井德行岐阜聖徳学園大学長をはじめ、NIEアドバイザーの原田結花(山県市立高富中)、細江隆一(美濃加茂市立西中)、奥田宣子(山県市立富岡小)の3教諭、NIE実践校の教諭ら約30人が参加。講演会や座談会、実践発表などに耳を傾け、今後のNIE活動の在り方を模索した。

 開会式で、日本新聞協会の白石興二郎会長が「情報の真偽を見極める力が必要。メディアリテラシーを高めることもNIEの課題」とあいさつした。

 続いて、青色発光ダイオード(LED)の開発で2014年にノーベル物理学賞を受賞した天野浩名古屋大教授が記念講演した。

 大学1年の工学序論の授業で教授が「工学は人と人を結ぶ学問だ」と教えてくれた。「勉強することは人の役に立つことだ」と理解でき、未来が広がり出合ったのが青色LEDだった。

 「できない」という先入観を突破することを目標に「成功したら絶対、世の中変わる」と思い続け、実験を重ねた。失敗の連続でも、自ら工夫して取り組めたことが楽しかった。

 研究を通して「特別な才能がなくても一心不乱にがんばれば人のためにできることがある」と学んだ。

 そして、研究者にとって「新聞記事は羅針盤」であり、記事をベースにどう解決すべきかを考えている-と述べ、若い人たちに「新聞は現在を映し出す鏡。未来の世界は自分たちで作るんだと考えてほしい。記事を良い世界を作るための素材として使えば明るい未来が待っている」とエールを送り、結んだ。

 この後、「頭の知識 体の知識」のテーマで座談会が開かれ、女子レスリング五輪金メダリストの吉田沙保里選手らに、愛知県の津山克樹君(小学5年)、鈴木杏奈さん(高校3年)が加わって意見を交わした。

 「将棋の羽生3冠が人工知能(AI)に勝つには」「世界で活躍するためには何を」「ネット社会で新聞のあるべき姿は」-2人の児童生徒が若者の視点から質問していく形で進められ、話題は広範にわたった。鈴木さんは、新聞の読み方を問われ「1面から順に見出しを見ていき、気になった記事をしっかり読んでいる」と答えた。吉田選手は「新聞は紙も、読みやすいネット記事も両方大事」と話した。

 進行役を務めた大会実行委員長の土屋武志さん(愛知教育大教授)は、多様な意見や情報を載せる新聞の特長を挙げ「こどもたちが学ぶときに新聞を使うと、人に対して寛容な心を持てるようになる。それを、子どもたちが体の知識として行動で示せるようにすることが次のNIEの課題ではないか」と話した。

 2日目は、10校の実践発表や9校の公開授業、七つの特別分科会が行われ、岐阜県内で実践する小中高校の校長や教諭も登壇した。

 高校の公開授業を参観した原田アドバイザーは「夢を探す、夢を調べる、夢を確かめる-。NIEを主体的なものにするためのキーワードは夢。夢を提示した素晴らしい授業だった」と言い、細江アドバイザーは「次期学習指導要領を受けたNIEカリキュラムの作成はとてもおもしろかった。NIEそのものがアクティブラーニングなので今後の取り組みのために意味ある内容だった」と話した。

 「NIE交流ひろば」では、本巣郡北方町立北方西小の吉田光宏教諭が「広がれNIEの輪!」と題して15年にわたる実践成果をポスターにまとめて展示。興味を持った記事を選んで要約し感想を記す児童の取り組み、自身の実践を教師仲間に伝える勉強会、記者らの出前授業などを紹介し、「NIEは特別なことではない。無理なく楽しく取り組んでほしい。NIEの輪を広げたい」と話した。

 来年の大会は7月に盛岡市で開かれる。