NIE担当の山下真琴教諭から、感染症に関する新聞記事について聞き、奈良時代とコロナ禍の現在を関連付けて学ぶ児童=各務原市鵜沼西町、鵜沼第一小学校
鵜沼第一小学校から送られた古里紹介の新聞を読む蕨島小児童=2021年3月、鹿児島県出水市荘、蕨島小学校

 NIE実践校の鵜沼第一小学校(岐阜県各務原市鵜沼西町)は、「天平のパンデミック」と言われる天然痘が流行した奈良時代の歴史学習で新聞を使った授業実践を行っている。授業では、聖武天皇の国づくりをテーマに据え、全国に国分寺・国分尼寺を建てた聖武天皇の狙いや思いについてより深く追究するために、新型コロナウイルスの感染が広がる現在の様子が分かる新聞記事を補助資料として活用。児童らは、教科書の内容と記事を読み比べながら、歴史の事象と今の暮らしを関連付けて考える力を伸ばしている。

 実践2年目となる本年度は、校内研修会などを利用し、タイムリーな記事を授業計画に合わせてどのように取り上げるかなど、効果的な新聞活用について研究している。

 6月末に行われた教科指導力を高める研修では、NIE担当の山下真琴教諭が6年1組の社会科の授業を公開。天変地異や天然痘のまん延、災害で不安定になった時代の国づくりを担った聖武天皇にスポットを当てた。当時と状況が似るコロナ禍で、国民に心を寄せる現在の天皇陛下の記事を補助的に活用し、国民への思いについて考えさせた。

 授業では、「大仏造立の詔」などを基に、仏教の力で国を治めようとした聖武天皇の政治の特徴について児童らが知識を深めた。時の権力者が自らの言葉で民衆に協力を呼び掛けるのが、当時として画期的だったことを知った。山下教諭は授業の終盤で、2月23日付の全国紙紙面の一部も紹介。児童らは、興味津々の表情で記事を読み込んだ。

 女子児童(11)は「記事と聖武天皇の詔から、聖武天皇は自分のことよりも国の安定や国民の幸せを願っていることが分かった」と、学びの成果を発表。男子児童(11)は「天然痘はコロナのように見えない伝染病だし、今のようにワクチンもない。記事を読んで、聖武天皇も病気や災害で苦しむ人を救いたい一心で国分寺を建てたと思う」と、過去と現在で時代が違っても同じ課題を抱える状況を指摘した。

 また同校は、新聞製作を通じた学校間交流も続けている。2019年から「ふるさと学習交流事業」の一環で、鹿児島県出水市立蕨島小とオンラインによる交流活動を実施。今年3月には、当時の5年生が互いの町の良さを紹介する新聞を製作。総合的な学習の時間を使って調べ学習を行い、写真や表、イラストを交えて模造紙にまとめ、出来上がった新聞をリモートで発表し合った。その後、それぞれの学校に郵送。送られた新聞を読み、地域の特色や自然環境の違いを学んだ児童らは「自分たちの町の自慢や守りたい良さを改めて実感した」と話した。