鎌を使って茅を刈る生徒=大野郡白川村飯島
英国から輸入、新たに導入された茅刈り機を見学する児童生徒ら=大野郡白川村飯島
茅の束ね方を教わる児童生徒ら=大野郡白川村飯島

 世界遺産・白川郷合掌造り集落がある大野郡白川村の義務教育学校・白川郷学園。1~9全学年が取り組む「村民学」の授業では、児童生徒一人一人が村民としての自覚を持ち、文化や伝統を学ぶ。6~9年生は合掌造り家屋の屋根のふき替えに使う茅(かや)の刈り取り作業に参加し、村伝統の助け合いの精神を育んでいる。

 村民学は自然や人々の暮らしについて学ぶ総合的な学習で、1~9年の全学年が取り組む。茅の刈り取りは、ふき替え作業をはじめとする村の生活に欠かせなかった相互扶助の仕組み「結(ゆい)」を感じてもらおうという狙いがある。木下広雄教頭は「合掌造り家屋を守るための活動に参加することで、保存の大変さや大切さを学んでほしい」と話す。

 今月上旬、同村飯島の脇谷茅場で行われた茅刈りには、6~9年生48人が参加した。上手重一さん(76)=同村荻町=が茅の種類や、かやぶき屋根と雪の関係などを解説。「茅刈りはユネスコ無形文化遺産にも登録された貴重な技術。次の世代に受け継いでいかなければいけない」と語った。

 「茅を脇に抱え込み、鎌を手前に引くように」。上手さんからポイントを教わり、7~9年生は刈り取りに挑戦した。片手で茎をつかみ、もう一方の手で丁寧に鎌を入れていった。

 作業に初めて参加する6年生は刈り取られた茅を直径30センチほどの束にし、縄で縛っていった。田口冬真君(11)が背丈ほどの茅を両手いっぱいに抱え「先端がバラバラの方向に向いてしまう」と苦戦していると、上手さんが「一度立てて切り口をそろえてから束ねてみて」とアドバイスした。

 約2時間かけて330束を刈り取った。乾燥させて保存し、来年度のふき替えに使う。合掌造り家屋の保存に欠かせない茅だが、村で現在使用している茅の約8割は村外産。村内には村や個人の茅場があるが、刈り取りに適した時期が短く観光シーズンとも重なるため、自給が難しかった。

 この日は村内の自給率向上を目指す「世界遺産白川郷合掌造り保存財団」が英国から輸入した電動の茅刈り機もお披露目された。職員は「機械導入で効率が上がる茅場もある一方で、急な斜面など手作業でしか刈り取れない場所もある」と児童生徒に説明し、茅刈り技術の継承を訴えた。全長約4メートルの茅刈り機が動くと、その迫力に児童生徒から歓声が上がった。