豚コレラ 発生9カ月
(7)関連業界 流通業者の経営直撃

2019年07月05日 10:58

と畜頭数が約10分の1に減少し、稼働しない日が増えた関市食肉センター=関市西田原

と畜頭数が約10分の1に減少し、稼働しない日が増えた関市食肉センター=関市西田原

◆補償なし「責任感だけ」

 国内で26年ぶりに発生した豚コレラは、発生から9カ月以上が経過し、これまでに県内の飼育豚約5万2千頭、総数の43%を殺処分に至らしめた。収入源を失った農家は18施設に上る。だが、いずれ手当金が見込める農家と違い、と畜や卸し、小売りなど"川下"の業者に補償はなく、流通量の減少が経営を直撃している。

 「取引先がどんどんなくなっていく」と頭を抱えるのは、関市食肉センターを運営する中濃ミート事業協同組合の早瀬敦史理事長(59)。「と畜頭数は10分の1に減り、今では週2日しか稼働しない」とため息をつく。

 国に支援を求めているが、納得のいく返答は得られない。「他地域から豚を仕入れたらとか、鶏をやればとか、簡単に言わないでほしい」。現状では、新潟や石川など近隣県に頼んで枝肉を回してもらい、一定量の卸売りだけは維持を試みる。「輸送費がかかって利益が出ない。それでも流通を確保する責任感だけでやっている」

 失ったのは仕事だけではない。地元農家とともに長年かけて育ててきた県ブランド豚「ボーノポーク」も、種豚や肥育豚のほとんどが殺処分で失われ、壊滅的な被害を受けた。「長年かけて、やっとおいしさを知ってもらえた。他県産に切り替えたら一気に取引先を失う恐れがある」と嘆く。

 岐阜市食肉地方卸売市場も、と畜頭数が6割減少した。運営する県畜産公社の浅野渉常務(60)は「農家が再開したときに備え、健全にと畜できる体制を残すべき」と国に訴える。
 畳みかけるように国が提案した早期出荷は、生産者以外に補償は出ない見通しだ。ただでさえ流通量が減少する中、さらに生産者が出荷を止めれば、関連業界の影響は計り知れない。

 と畜場から出る豚の皮や骨などの残さ処理業者の男性は「生産者の保護しか考えていないが、私たちの業界がなくなれば、困るのは生産者だ」と訴える。と畜量の減少に伴って、毎日だった集荷は3、4日に1回に減少した。早期出荷が進めば、もっと仕事はなくなる。「なくしたら簡単には元通りにならない」

 小売店への影響も深刻だ。岐阜市の丸栄西村精肉の西村琢磨社長(48)は、県ブランド豚「美濃ヘルシーポーク」をメインに県産豚の販売にこだわり続けてきた。しかし、徐々に流通量は減り、今や入荷量は5分の1になった。やむなく他県産のブランド豚を扱い始めたが、どうしても仕入れのコストは上がる。「今月いっぱいは耐えられても、来月は値上げせざるを得ないかもしれない」と話す。

 県産豚の味や品質に自信があったからこそ、こだわりを持って販売してきた。「値上げするなら県産豚じゃなくていい、と言われかねない。せっかくついたお客さんが離れてしまう。この問題は一体いつになったら終息するのか」と歯がゆそうに語った。


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