豚コレラ 発生9カ月
(8)広範囲で狩猟制限 「ぎふジビエ」に逆風

2019年07月05日 10:58

豚コレラに感染した野生イノシシが見つかる前に、捕獲したイノシシの肉が冷凍庫には保管されている=本巣市佐原、里山ジビエ処理施設

豚コレラに感染した野生イノシシが見つかる前に、捕獲したイノシシの肉が冷凍庫には保管されている=本巣市佐原、里山ジビエ処理施設

◆イノシシ肉、取引量激減

 家畜伝染病「豚(とん)コレラ」の感染は野生イノシシにも広がった。イノシシがウイルスを運び、養豚場での発生につながっているとも指摘される。あおりを受けてイノシシの捕獲は広範囲で制限され、ジビエ(野生鳥獣肉)を取り扱う業者らに影を落とす。

 「イノシシを8割扱っていたら倒産だったよ」。里山ジビエ会の代表理事で猟師の近藤正男さん(75)は浮かない表情で語った。会は2016年3月に本巣市内にジビエの処理施設を建設した。17年度から本格的に稼働し、軌道に乗った18年度に豚コレラの問題に巻き込まれた。

 猟師が市内で捕ったイノシシとシカを生肉に処理し、販売している。シカを扱う施設が少ないことに目を付け、イノシシの取扱量は2割にとどめていた。

 昨シーズンは感染イノシシが見つかったことで、市内の一部の地域は狩猟期の11月を迎えても銃やわなで捕獲できなくなった。施設にイノシシはほとんど持ち込まれず、イノシシの感染状況の把握と個体数を削減する「調査捕獲」やワクチンの散布作業などに猟師が追われているために忙しく、シカの入荷するペースも、例年の年間900頭の半分にとどまる。「イノシシとシカの取扱量が逆だったら」。背筋が凍るような思いだった。

 少量を取引していた料理店からの注文はほとんどなくなった。国は豚コレラに感染した豚やイノシシの肉を食べても人体に影響しないという見解を示しているが「客が気にするのだろう」と察する。感染していないか確認されることもある。施設の冷凍庫には市産のイノシシ肉が360キロ残るのみ。枯渇に備え、不本意だが他県産を仕入れる準備を整えた。

 岐阜市の「日本料理桜梅桃李(おうばいとうり)」の店主玉越勝利さん(51)は県産のイノシシ肉を鉄板焼きや鍋料理、薫製などにして振る舞っている。県内で捕れ、県が独自に策定したガイドラインに沿って処理されるイノシシやシカの肉の「ぎふジビエ」を提供する飲食店の一つ。仕入れている処理施設の在庫は5月に底を突いた。「仕入れのめどが立たず、寂しい」。今季も県内のイノシシを使いたいと願うが、他県産の購入も視野に入れている。

 県は調査捕獲の対象地域を7月から県内全域に拡大する方針を示す。イノシシの年間捕獲数約1万頭に3千頭を上乗せした頭数を捕獲目標数に掲げ、生息数を少しでも減らす狙いだ。近藤さんは「もっと早い時期に減らしておくべきだった。他県にも広がらなかっただろう」と指摘する。美濃加茂市の男性猟師は、イノシシが逃げて感染を広げる恐れがあるという理由から調査捕獲に銃を用いない考えに「わなにかからないイノシシは一定数いる。警戒心が強い動物だ。銃を使わないと捕りきれないのではないか」と疑問を呈す。

 狩猟のできない地域が広がり、禁猟期間が長引けば、猟師が減少する恐れがある。県内の狩猟免許の所持者は1971年に延べ約1万3900人いたが、2006年には延べ約3700人に落ち込んだ。その後は若い世代を中心に増加傾向に転じ、17年度は延べ約5千人に増えたが、5人に3人は60歳以上だ。「山を1年間歩かなければ、体力的に猟をできなくなってしまう」。男性猟師は行く末に危機感を抱く。


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