【恵那駅】高校球児の息子を毎朝送る 父子で歩んだ2年半

2018年08月31日 09:43

「あっという間の2年半だった」と語る成瀬幹男さんと柊さん=恵那市大井町、恵那駅

「あっという間の2年半だった」と語る成瀬幹男さんと柊さん=恵那市大井町、恵那駅

 冬だと辺りはまだ真っ暗だった。午前6時26分の始発に間に合うよう、人もまばらな恵那駅(岐阜県恵那市大井町)の構内へと野球の重い荷物を抱えながら向かう息子を毎日見送った。「行ってらっしゃい」「行ってきます」。いつも親子で少ない言葉を交わしてきた。

 恵那市笠置町の成瀬幹男さん(53)、柊(しゅう)さん(17)親子。柊さんは小学3年生から野球を始めた。中津川市の県立高校に入学すると硬式野球部へ入った。自宅は山深い笠置町の毛呂窪地区。朝練のため午前5時30分の起床。駅へ車で送るのはもっぱら幹男さんの仕事だった。送った帰り、恵那山の方角から朝日が昇るのを見ることにも慣れた。

 柊さんが主将として迎えた最後の夏は、あっけなかった。

 7月、シード校と当たった初戦。チームは逆転を許すと徐々に点差を広げられ、終盤に1点を返して食い下がったが、振り切られた。ひとしきり泣きじゃくった柊さんから声を掛けられた。

 「支えてくれてありがとうございました」

 もう言うなー。言葉を多く交わさないでも悔しさは十分分かっている。高校野球で共に歩んだ親子の約2年半が終わった。

 早朝、親子で駅へ向かうことはもうなくなった。「不思議だけどまだ実感が湧かないのが正直なところ。時間がたつと寂しく感じるかもしれないかな」と幹男さん。夏は間もなく終わる。朝、駅を横目に走ると、一人の車内からうろこ雲が見えた。

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