【美乃坂本駅】リニア駅予定地のスナック 迫る移転感謝と決意

2018年09月01日 10:01

「北島三郎さんの歌は人生の応援歌」。これまでの店の歩みを笑顔で振り返る荻野輝子さん=中津川市千旦林、マドリード

「北島三郎さんの歌は人生の応援歌」。これまでの店の歩みを笑顔で振り返る荻野輝子さん=中津川市千旦林、マドリード

 美乃坂本駅(岐阜県中津川市千旦林)の裏手に広がる、のどかな田園風景。恵那山と笠置山を両側に望む線路沿いの田んぼでは秋の気配が近づき、稲穂が黄金色に輝き始めている。一帯はリニア中央新幹線の岐阜県駅予定地。開発が始まれば、県東の玄関口として風景は大きく様変わりする。

 駅予定地にある「マドリード」は、荻野鉄三さん(71)と輝子さん(74)夫妻が営むカラオケ喫茶・スナックだ。店内は北島三郎さんら演歌歌手のポスターが貼られ、ミラーボールが輝くステージが目を引く。「一番感謝しているのは支えてくれたお客さま」。"ママ"の愛称で親しまれる輝子さんは笑顔でそう振り返った。

 鉄三さん27歳、輝子さん30歳の時に開いた店。もともと中津川駅の近くにあったが、30年ほど前に輝子さんの実家に戻り、今の店を建てた。鉄三さんを中心に北島さんの後援会を組織し、常連客を連れて毎年全国の公演に駆け付けた。カラオケ大会も毎年開き、県内外から集まった歌自慢が喉を競った。店で出会った男女が結婚して喜んだこと、歌が大好きだった常連客が亡くなって悲しんだこと、いろんな人生が走馬灯のように駆け巡る。

 リニアの槌(つち)音が聞こえると、店の終活も始まる。カラオケ大会は一昨年末の40回を節目に終えた。でも、輝子さんは鉄三さんと約束している。「いったん閉めるけど、新しい場所でもお店を頑張っていこうねって」

 岐阜新聞社は「地方創生~チカラは地から~」をテーマに、県内各地で移動編集局を展開している。第4弾は東濃5市の魅力を伝える。

 美濃焼、地歌舞伎、山城、地酒、そして近未来のリニア中央新幹線―。山々に囲まれた東濃地域は、豊かな自然が育んだ歴史や伝統、ものづくり、食が多彩な輝きを放ち、多様な文化が交差する「宝箱」だ。