長良川と言えば鮎。ですが、おいしいのは鮎だけではないといいます。その一つがカニ。モクズガニという種類が獲れるそうです。高級食材の上海ガニと似ていて、「長良川の秋の最高の味覚」と言う人も。岐阜県内で知名度が高いとは言えないモクズガニ、いったいどんな味なのでしょう。食べる機会があると聞きつけてお邪魔すると、とびっきり濃厚な味わいに出会うことができました。

 

 モクズガニはほぼ日本全国に分布しています。海と川を行き来しながら育つといい、中華料理で食べられる上海ガニと近いとされています。8センチほどの大きさで、はさみにフサフサの毛が生えています。このフサフサからモクズガニと呼ばれるそうです。

 試食イベントはNPO法人ORGAN(岐阜市湊町)理事長の蒲勇介さん(44)の市内の自宅で開かれました。このために、蒲さんは長良川で取れたモクズガニを60杯仕入れたのこと。挑戦したのは「酔っぱらいガニ」です。

長良川で取れたモクズガニ

 「酔っぱらいガニ」は本来、上海ガニを紹興酒などで漬け込んで作ります。この料理、ポイントは生きたカニを使うこと。カニを生きたまま酒に沈めると、水中と同じように呼吸のために酒を吸い込み、全身に酒を行き渡らせることから、酒を飲んで酔っ払った蟹、すなわち「酔蟹」と呼ばれるのです。そういった新鮮なカニが手に入る長良川近くだからこそできる料理です。そして、漬け込んだのは白木恒助商店(岐阜市門屋門)の10年ものの古酒2升! 紹興酒に似た熟成された甘味を持つこのお酒、決して安くはありません。長良川のモクズガニを長良川水系の水を使った古酒で漬けます。他にも山川醸造(岐阜市長良葵町)のたまりしょうゆ、ネギなども入れたそうです。蒲さんは「これは史上初、初めて行われる完全国産酔っ払いガニ」と言います。ぜいたくだ。

蒸されるモクズガニ

 1週間漬けたガラス瓶からモクズガニを取り出します。真っ黒な古酒の海から姿を現すカニの神秘的なことよ。これを12分間蒸します。上海ガニは生で食べるそうですが、川で獲れたカニは寄生虫のリスクがあるそうで、熱を入れます。蒸気の中で甲羅がだんだん赤く染まっていきます。ふたを開けると湯気がふわり。歓声が上がりました。...