放射線治療医 田中修氏

 今日1月25日は、1902年に北海道旭川市で氷点下41度を観測したため、日本最低気温の日となっています。今は受験シーズンです。受験日の万が一の大雪に備えておきましょう。

 今回は皮膚がんについて記します。ほとんどの皮膚がんは、日光にさらされる顔や四肢に発生します。皮膚がんは高齢者に比較的多いため、人口の高齢化に伴い、将来的に皮膚がんの発生率が増加すると予想されます。一方、胃がんや大腸がん、肺がんなどの内臓に発生するがんとは異なり、がんが目に見える部分に発生するため、早期発見が可能であり、その結果、完治できる皮膚がんも多くあります。今回は、皮膚に気になる病変が発生した場合、どのように対処したらよいかお話ししようと思います。

 皮膚がんは一般的に、隆起した「膨らみ」や「湿疹や水虫のような病変」として知られているもので、最初は小さな病変でも、治療せずに放っておくとゆっくりと進行していきます。がんは自然に増殖し、痛みを感じないので、まさかがんであるということを考えていなかったという声をよく耳にします。

 つまり、皮膚に異常があっても、いずれ治ると思ってしまい、普段使っている湿疹や水虫の軟こうを塗る場合が多いです。しかしがんであれば何も変わらないか、むしろ広がって進行してしまうのです。ただの皮膚病だと思って放っておくと、皮膚がんは他の臓器のがんと同じように、最終的にはリンパ節や内臓に転移し、死に至ることもあります。

 皮膚がんは、黒くなるもの、赤くなるもの、その他の3種類に大別することができます。このうち、黒いものには「悪性黒色腫(ほくろがん)」と「基底細胞がん」があります。赤くなるものとして「有棘(ゆうきょく)細胞がん」があり、皮膚がんの中で最も発症頻度が高く、全体の約3割を占めます。

 いずれの場合も手術で切除するのが第一選択ですが、顔にできた場合は術後の見た目を考えて、最近では放射線治療で治すことも多くなりました。今回は有棘細胞がんが放射線治療で治った患者さんを紹介します。全部で30回(30日)の通院で治療前=写真上=と治療後=同下=で分かるように非常にきれいに治っています。この30回という放射線治療回数は、分割して毎日照射することで、できるだけ副作用を少なくするための方法です。

 今回は皮膚がんについてお話ししました。皮膚がんは目で見えるため早期発見ができるがんです。また放射線治療の高精度化によって切らずに済む場合も増えてきました。皮膚のできものが「消えない」「大きくなってきた」場合はまず皮膚科を受診し、患部によっては放射線治療も考えてみましょう。

(朝日大学病院放射線治療科准教授)