内科医 梶尚志氏

 皆さん、はじめまして。可児市で内科クリニック梶の木内科医院を開業しております、梶尚志(かじたかし)と申します。開業以来23年間、総合内科専門科医として年間5万人、延べ72万人の患者様と向き合ってきました。その中には、体調不良で医療機関を訪れ、さまざまな検査をしても「異常なし」と言われて、その結果多くの医療機関を渡り歩いたり、テレビCMでさまざまなサプリメントを購入したり、民間療法を試したりするものの、一向に体調が良くならない患者様が多くいらっしゃいます。

 私は、通常診療では解決できない患者の症状が、さまざまな栄養素の不足からくる栄養失調が原因であると考え、分子整合栄養医学という分野からのアプローチで、血液検査の結果を基に栄養解析を行い、現在まで延べ400人近くの患者様にお薬に頼らない栄養療法を実践してきました。

 「栄養失調」。時代錯誤とも思われるこの症状の方は、女性も男性も子どもも、実は、意外にすごく多いと実感しています。飽食の時代だからこそ今、「隠れ栄養失調」による不調が急増しています。

 例えば①朝起きられない②お肌のトラブル③慢性の頭痛④不眠や憂鬱(ゆううつ)な気分⑤月経痛⑥女性・男性の更年期症状⑦不妊症⑧(これといった症状がないけれども)なんとなくだるい・やる気が起きない⑨疲れやすい。さらには、いまだに新型コロナの後遺症に悩まれている方々。こんな症状が思い当たる方は「かくれ栄養失調」かもしれません。

 育児が最優先で自分のために時間をつくれなかったり、仕事に追われて夜遅くに夕飯を食べたり、そんな忙しい現代人が最初に犠牲にするのが食事なのです。朝食をきちんと食べていない、夕食は揚げ物や炭水化物ばかり。こんな食生活が日常だったらどうなるでしょう。

 私たちの体は、実は分子(栄養素)からできています。そして、当たり前のことですが、私たちはその栄養素を食事から摂取して生きるエネルギーに変えています。体は料理と同じ、バランスの取れた品質の良い材料で調理をすると、おいしい料理が出来上がることと同じで、私たちの体も、バランスの取れた栄養素を適切に組み合わせることで、健康的な体、心の安定、若々しい見た目が作られるのです。

 ですから、栄養が後回しにされれば、心も体もバランスが崩れて悲鳴を上げている状態になり、警告として体の不調が表れるのです。

 これから、この連載を通して読者の皆さんのなかなか解決できない症状の原因を栄養の面からひもといて、薬に頼らない治療法、そして、未病、予防につながる健康増進法のご提案をしていきたいと思っています。どうぞ毎回、お楽しみになさってくださいね。