成人年齢引き下げの認識や影響などについて語り合う学生たち=岐阜市柳戸、岐阜大

 成人年齢を18歳に引き下げる改正民法の施行に合わせ、岐阜新聞社は岐阜大教育学部の学生に座談会を開いてもらい、受け止めを聞いた。新たに成人として扱われる19歳の学生は「まだ実感がない」というのが率直な思いだというが、「怖さもある」と不安も。広がる権利を歓迎する一方で、負う責任の重さに揺れる心情を明かした。

 座談会に参加したのは、1年生の竹本聖菜さん(19)、井戸浩太さん(19)と、3、4年生の計5人。教育学部の田中伸准教授(社会科教育学)がオブザーバーを務めた。

 19歳の竹本さん、井戸さんが口をそろえたのは「まだ実感がない」との思い。2人は高校の授業で成人年齢引き下げについて学んだが、実際に4月1日から「成人」となる感覚は乏しいという。

 不安の一つは、未成年者の契約を解約することができる「未成年者取消権」を行使できなくなること。さまざまな契約を親権者の同意なく結ぶことができるようになる一方で、「責任が増える」と竹本さん。不当請求やゲーム課金などでトラブルに巻き込まれる懸念もある。竹本さんは「法律で守られていたものがなくなる怖さはある」、井戸さんは「自分自身の能力を高めることが大切だと思う」と話した。

 一足先に成人となった先輩たちは「必要以上に身構える必要はない」とアドバイスした。大学入学を機に1人暮らしを始めた石原茉友さん(21)は「まだ親に頼っている部分が大きい。成人になった変化はあまり感じていない」。遠藤貴和子さん(21)も「精神的にも経済的にも自立できていなくて、まだまだ大人になれていない」と苦笑した。

 田中准教授は、鍵は教育にあるとみる。「課題はいろいろあるが、学校教育が大切」と指摘。実際に起こった契約トラブルなどを弁護士ら専門家が中高生に伝え、主体的に課題を考える「リアルな授業」が求められるという。加えて、各家庭では「保護者が『駄目』『認めない』と制限するのではなく、子どもを成人とみなして対話することも必要」と強調した。

 契約できる事柄や、資格取得の門戸が広がる成人年齢の引き下げ。田中准教授は「自らの意思と判断で自己決定ができるようになるのが改正の意義。若者が主体的に社会にコミットしていくことにつながれば、より良い社会がつくりだせるのでは」と期待感を示した。

(2022年3月23日掲載記事)

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