初当選から一夜明け、事務所を訪れた支援者と喜び合う本田由美子さん(右)=大垣市旭町

 岐阜県内の統一地方選後半戦で23日に投開票された12市町議選では、女性の立候補者38人中、32人が当選した。後半戦での女性当選者は無投票だった11人を含めて43人となり、2019年の前回統一選より7人増。前半戦の県議選では女性の当選が2人増えており、統一選で改選が行われなかった自治体も合わせると、県内の女性地方議員は9人増の96人となる。全議員に占める比率は13・5%から14・9%へと上昇するが、人口の男女比と同じ水準にはまだ遠い。今回当選した女性候補や議員らからは、新たに政治を志す女性の登場を期待する声も上がる。

 県内後半戦の9市議選の女性の候補者は前回の23人から35人に増加、当選者も23人から29人へと増えた。また8町村議選に立候補した女性14人は全員が当選し、女性候補13人全員が当選した前回より1人増えた。

 増加の背景として、候補者や周囲の人たちが、地方政治で女性の参画を進めようと行動したケースも。大垣市議選で初当選した無所属新人の本田由美子さん(50)は、市民活動に取り組んでいた。30年務めて引退した元市議の男性(70)から後継指名され、選対本部長として支援も受けた。

 当選から一夜明けた24日、本田さんは支援者と勝利をかみしめ、「子育てとの両立にいくらか不安はあるが、今までのように周囲と助け合いながらやっていきたい」と話した。男性は「今の議会は男社会。女性の声が必要と感じ、後継には女性をと考えていた。本田さんに続く人が出てきてほしい」と願う。

 市町村議選では自ら立候補を決めず、地域の推薦を受けて出馬する例も多い。しかし、地域で役職に就くことの少ない女性にとっては、推薦の打診を受ける機会も男性と比べ少なく、女性議員が少ない一因とみられている。加茂郡富加町でトップ当選し、初の女性議員になる新人の林由香里さん(58)はそんな風潮に対し「自分が手を挙げて意思表示しないと、誰も支援してくれない」ときっぱり。「まずは自分が姿を見せていく。男女ともに理解者を増やし、誰もが社会参加できる町にしたい」と話す。

 女性議員が誕生する自治体がある一方、女性ゼロ議会に戻った所も。無投票となった加茂郡坂祝町だ。唯一の女性町議の新井谷正代さん(61)が5期務め退くことを決め、今回10人の男性が当選した。新井谷さんは「男性議員にも女性の声を吸い上げてくれる人もいる。それぞれの考えや意見を見てほしい」と語る。議員生活を振り返り、「いろいろな経験ができて良かったが、大変な思いもした。『議員になってみない?』と軽々しくは言えない」としつつ「女性でやりたい人がいればバックアップしたい」と後進に期待する。

 今回の統一選を終えて、県内の女性ゼロ議会は坂祝町を含む5市町、女性が1人だけの議会は12市町村で、選挙前と数は変わらなかった。今年は女性議員がいない加茂郡川辺町、七宗町のほか女性議員が1人だけの安八郡輪之内、安八町、本巣郡北方町、加茂郡八百津町で町議選があり、立候補の状況や有権者の選択が注目される。

「さまざまな視点で論議」「家庭の現実知る女性の意見を」

 通信アプリLINE(ライン)で読者とつながる岐阜新聞の「あなた発!トクダネ取材班」が、登録者に県内の地方議会の女性比率は何%を目指すべきかを尋ねたところ、「50%」を選んだ人が最も多く回答者の46・9%を占めた。

 「50%」を選んだのは38人。加茂郡白川町の自営業の男性(65)は「男女半数ずつでさまざまな視点から政策論議ができる」、岐阜市の女性公務員は「教育の場でも管理職の女性が増えている。家庭や子育ての現実を知る女性の意見をもっと取り入れてほしい」と答えた。

 次いで多かったのは14人の「40%」。50代のパート女性は「女性に限らず、いろいろな立場の人の意見をニュートラルに受け止め、問題を解決できたらいい」と広く議会に多様性を求めた。

 3番目は「現状のままでよい」。選んだ12人中10人が男性だった。揖斐郡大野町の男子高校生(16)は「被選挙権に戦前のような制限はない。女性自身が(立候補を)望んでいないのでは」と意見を寄せた。

 アンケートでは、女性が政治の場で活躍できるようにするため、統一地方選の当選者に期待することや県民にどんなことができるかも尋ねた。

 郡上市の女性(65)は「託児、会議の時間帯の調整、生理休暇」を議会に導入することを提案。ハラスメント講習の義務化やオンライン会議の積極活用なども挙がった。「学校だけでなく家庭や地域から、『女の子だから』『男の子だから』という前置きをなくす」(50代のパート女性)など、社会のジェンダー観を問う意見も相次いだ。

 男性(57)は県民が議員を「応援し一緒に考え、意見を言うこと」が大切とし、「セクハラに負けず、勇気を持って戦って。権威権力に屈せず新しい風通しのいい議会にして」と女性当選者にエールを送った。大野町の主婦(47)も「子育てや家事をしながら社会を変えたいと思う信念を尊敬する。大切に応援し、温かい声を届けよう」と読者に呼びかけた。

 アンケートは4月19~21日に行い、81人(男性43人、女性34人、その他4人)から回答を得た。