「柴山雄一 夢と希望をありがとう」などと書かれた横断幕を手にするファンたち

 「貫ちゃん、お帰り」「柴山さん、お疲れさま」。2人の登場とともに大きな声援と拍手が湧き起こり、関西系お笑いコンビの乗りでぶっちゃけ爆笑トークがスタート。JRAの田口貫太騎手(20)と柴山雄一騎手(45)のトークショーは大みそかの笠松競馬場で開かれ、詰め掛けた大勢のファンを楽しませた。

 笠松里帰りの貫太コールで開演し、ラストは騎手引退・調教助手転身をたたえる柴山コールで閉演した「笠松劇場」。来場できなかった方も多いので、笑いと涙の2ステージをネット上で紹介する。

 2人は競馬場には来場したが、レースで競走馬に乗ることはなく、終始リラックスムード。昭和レトロ感が半端ない飲食店前の特設ステージで「貫太君」「雄一さん」などと呼ばれ、午後のひとときを盛り上げた。

特設ステージに登場した柴山雄一騎手(右)と田口貫太騎手。爆笑トークで盛り上げた

 ■昭和顔とイケメン「貫太&雄一」名コンビ

 田口貫太騎手はノスタルジックな「昭和顔」ともささやかれ、自然な笑顔で今や競馬界のアイドル的存在になった。岐阜県岐南町出身で、両親が笠松競馬の元ジョッキーで、昨年3月にJRAデビューを果たした。35勝を挙げてルーキーでは断トツの成績で実力もメキメキ。JRAの最多勝利新人騎手賞や関西放送記者クラブ賞にも輝いた。

 柴山雄一さんは大阪府出身で、デビューは笠松競馬(1998年)というイケメンジョッキー。独学でJRA騎手試験に一発合格した頑張り屋。美浦移籍後の1年目(2005年)に80勝。「東のユウイチ」とも呼ばれ、年間ホープ賞を受賞。ロックドゥカンブ、ヤマニンキングリーなどで中央重賞12勝。地方では重賞3勝。GⅠ戦線でも活躍したが、悲願のVにはあと一歩届かず。この日限りでジョッキーを引退。調教助手としての新たな道に進んだ。

大勢のファンが詰め掛けた特設ステージ

 ■オグリが「カサマツ音頭」踊ったステージ

 笠松競馬場に縁がある2人の登場で、小さな特設ステージ前は大盛況。人気漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」でオグリキャップが「カサマツ音頭」を踊ったステージ。雨がぱらつく中、ざっと見渡したところ400人ほどのファンが熱い視線を送った。最初に力強い貫太コールが響くとヒートアップ。

 アンカツさんやミルコ・デムーロ騎手ら、笠松での数々のトークショーの中でも最高の盛り上がりを見せた。レーシングアナウンサーの長谷川満さんが司会を務め、鋭い突っ込みでJRA騎手の本音を引き出した。「貫太&雄一」第1ステージはトークショーデビューの貫太君中心で始まった。  

長谷川満さん(左)の鋭い突っ込みに、軽快なトークで「舌好調」の2人

 ■貫太君「かわいい」と言われて

 ―初めてのトークショーですごいよ、大人気だね。

 貫太「こんなに集まってくれると思わなかったんでうれしいです。新年もまた頑張ろうという気持ちです」
 
 ―この初々しさはどうですか。

 雄一「かわいい、かわいい」

 ―「かわいい」と言われるのはどうですか。

 貫太「自分では思わないですけど『ブス』って言われるよりはいいです」

 ―中央で35勝。新人賞おめでとうございます。

 貫太「デビューの時に考えていたよりも、多く勝てたなあという印象です。関係者の方に多く乗せてもらって、すごく感謝しています。また頑張りたいです」

 ―貫太君の騎乗を見てて先輩としてどうですか。

 雄一「本当に上手ですね。冷静だし、狭い所も内に突っ込んだりとか。こんなにかわいいのに、大胆な騎乗してうまいなあと」

 貫太「素直にうれしいです。柴山さんよりは全然まだまだなんで、しっかり先輩を見習って頑張りたいです」

昨年3月・阪神、レッツゴーローズでJRA初勝利を飾った貫太騎手

 ■「阿部慎之助さんに憧れ、プロ野球選手目指した」

 ―ご両親がジョッキーだったし、小さい頃から、自分もなろうと思っていましたか。

 貫太「小さい頃はプロ野球選手を目指していたんで。憧れの選手は阿部慎之助さんでした。ジョッキーになったのは、中3の時、日本ダービーを見に行って気持ちがコロッと変わってしまって、今ここに立っています」

 ―雄一さんはどうでしたか。

 雄一「中3ぐらいですね。でも話を聞いていたら、貫ちゃん、気付くの遅いよね。中3で体格はある程度分かっているし、プロ野球選手は無理だなあと感じるはず。不思議に思っていたんですけどね」

 貫太「ずっと小さかったです。今は馬がいて、すごくいい幸せな仕事だなあと思っています」

 雄一「僕はそんな順風満帆なことはなかったです。(20歳と)デビューが遅かったからね」

 (貫太君は「愛されキャラ」で、ほっこりとさせられるファンも多い。20歳の誕生日にはジュベナイルFでGⅠにも初騎乗した)

 ―3月にデビューして初勝利はどうでしたか。
 
 貫太「1カ月間、笠松では勝たせてもらっていたんですけど、JRAではなかなか勝てなくて不安でしたが、(自厩舎のレッツゴーローズで)勝った時は素直にうれしかったです」

 ■「トミシノハラディンで初勝利、競馬を教えてもらった」

笠松時代、デビュー1年目の柴山雄一騎手。トミシロハラディンで初勝利を飾った

 柴山「笠松でも、JRAでも初めて勝ったことは覚えています。笠松ではトミシノハラディンという馬で、初勝利と初オープン勝ち(東海クラウン)。まだ素人でしたんで、その馬に最初からずっと競馬を教えてもらった感じですね。またがっているだけで勝たせてくれ、ペースとかも勝手に馬がつくってくれました」

 ―貫太君は、馬に教えられるということは。

 貫太「もちろんありますね。馬は一頭一頭タイプが違うんで。人気してても、その馬のタイプに合わなかったら、全然走らないんで。日々勉強しています。

 ―デビューして苦労したことは。

 貫太「きょう話す悩みじゃないですね。ちょっと重たい話になるんで」

逃げ馬より、差し馬が好きだという貫太騎手

 ■「減量が取れていくとターニングポイント」

 ―今後強化していきたいところは。

 貫太「騎乗法もそうですし、まだまだ先輩の一流ジョッキーより劣っていると思っているので、これから減量が取れていくなかで、もっともっとレベルアップしようかなと」

 ―(見習騎手から)減量が取れていくというのは、JRAでもありますよね。

 雄一「ありますね。本当にターニングポイントというか、厳しいポイントですね」

 ■「あんまり逃げ切れたことがなくて」

 ―こういう馬が好きとか、タイプはありますか。

 貫太「あんまりハナとかにガーッとか行ける馬よりは、リズム良く大事に中団ぐらいで乗られる方が好きなんで」

 ―逃げ馬で追い掛けられるよりは、競馬は差す方が気持ちいいですか。

 雄一「差すのもいいですが、逃げ切るのもなんかいいですよ。自分のペースで行って、それが合っていて逃げ切れたら『ヨッシャー』と。付いてこうへんみたいな」
 
 貫太「僕はあんまり逃げ切れたことがなくて、いつも最後にジワーッと差されるんで、逃げ馬はなんかあんまり好きじゃないです」

 ■最後の日「邪魔しやがって、勝たせろ」

 ―最後、差されるとイラッとくるものがありますよね。雄一さんは「アーッ」とか思わなくなりましたか。 

 雄一「いや思いますよ。最後の日(12月28日・中山4R)、丸山元気、邪魔ばっかりしやがって、本当に。ゴール過ぎてから怒鳴ってしまった。(差し届かずクビ差2着に終わり)『勝たせろ、ボケー』とね」

 (悔しい2着を思い出し、これまでクールだった雄一さんにも感情が入り、「調整ルーム」にいるようになって、ファンは爆笑の渦に包まれた)

昨年12月、阪神ジュベナイルFでGⅠ初騎乗を果たした貫太騎手

 ■「GⅠにも騎乗、またあの舞台に」

 ―新年の目標は。 

 貫太「やっぱり重賞を勝ちたいです」

 ―GⅠにも騎乗して、雰囲気は違いましたか。

 貫太「もちろん平場のレースと違ってお客さんの雰囲気もすごかったです。ジョッキーをやっている以上は、ああいう舞台に位置付けられるようになりたいなと思いました」

 ―独特なものが大きなレースにはありますよね。

 雄一「ありますね。JRAはお客さんもすごいし、雰囲気が全然違いますよね」

 ―緊張感はいかがでしたか、期待度も増すでしょうが。

 貫太「先生とかにはGⅠを楽しんでこいとレース前に言われ、心にゆとりを持って返し馬とかにも行けたかなあと。もちろん、期待に応えていきたいです」

 (貫太君を応援する拍手が湧き、「2年目は50勝」を期待する声も上がった)

 ―目標として、こんなジョッキーになりたいとかは。

 貫太「僕は柴山さんみたいになりたいですね」

 ―貫太君の機転の利き方がいいですね。

 雄一「いや素晴らしいですね。大事なことです。笠松のみんなも愛してくれますよ」

笠松競馬場で地方・中央を通じて初Vを飾った貫太騎手。JRA100勝までは丸刈りを継続する

 ■「丸刈り、100勝したら伸ばし始めようかな」

 ―アンカツさんがこのステージで貫太君に期待することは「髪形」だと言ってましたが。変えるつもりはありますか。

 貫太「みんなが期待されている丸刈りはもうやめると思いますけどね。(見習騎手として)100勝までは丸刈りのつもりなんで。それを突破したら伸ばし始めようかなと思っています」

 (これには、ファンから「エーッ」と驚きの声が上がった。ちょっと残念そうな…)
  
 雄一「僕は(オシャレ)番長じゃないけど、金髪で来てほしいね。『貫ちゃんどうした、はじけたね』って」

 貫太「お楽しみにしてください。きょうはこれだけ集まっていただき、うれしいです。成績をしっかり挙げられたんですけど、これに満足することなく、頑張りたいです。また応援をよろしくお願いします」

 (柴山騎手は、貫太君の見た目や騎乗ぶりなどから「かわいい」を連発していた。会場から「頑張れー」の声。第1ステージが終わる頃にはまた雨が降ってきたが、左右、正面と3方向でのフォトタイムとなった。やはりアイドル並みの注目度だった)


 ※「オグリの里 聖地編」好評発売中、ふるさと納税・返礼品に

 「オグリの里 笠松競馬場から愛を込めて 1 聖地編」が好評発売中。ウマ娘シンデレラグレイ賞でのファンの熱狂ぶりやオグリキャップ、ラブミーチャンが生まれた牧場も登場。笠松競馬の光と影にスポットを当て、オグリキャップがデビューした聖地の歴史と魅了が詰まった1冊。林秀行著、A5判カラー、200ページ、1300円。岐阜新聞社発行。岐阜新聞情報センター出版室をはじめ岐阜市などの書店、笠松競馬場内・丸金食堂、名鉄笠松駅構内・ふらっと笠松、ホース・ファクトリーやアマゾンなどネットショップで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも加わった。