19戦目で待望の初勝利を飾った明星晴大騎手(中央)

 笠松競馬場周辺の桜並木の花びらは散ったが、場内では「サクラ咲く」の熱気ムンムン。新人ジョッキーの明星晴大騎手(後藤佑耶厩舎)が、お母さんやファンの熱い応援を背中に受け、待望の初勝利をゲットした。先輩ジョッキーらからも祝福の嵐でスマイル満開となった。

 18日の笠松競馬3R(C12組)、デビューして19戦目で勝利の瞬間が訪れた。17歳になってまだ2ヵ月の「笠松の新星」。3番人気のスングリダンダン(牝4歳、笹野博司厩舎)に騎乗し、好位から差し切り勝ち。愛媛から応援に駆け付けたお母さんに初勝利のゴールシーンをプレゼントすることができた。

スングリダンダンに騎乗し、1周目は2番手につけた明星騎手

 ■4コーナー先頭、3馬身差つけてゴールイン

 4コーナー奥からの1400㍍戦。返し馬で放馬があり、1頭競走除外で9頭立てに。明星騎手は5枠から好スタートを切ると、逃げたマルヨクレハ(東川慎騎手)をピッタリとマーク。3コーナーで並びかけ、残り400メートルを切ってスパートし、4コーナーで堂々の先頭。最後の直線では気合のムチを1発、2発入れると後続に3馬身差をつけてゴールイン。スタンドから祝福の拍手が湧き起こった。

スングリダンダンで1着ゴールを決めた明星騎手

 「五つ星」の勝負服と黄色の帽子がマッチ。初勝利のおいしい味をかみしめながら、装鞍所エリアに戻ってきた明星騎手。「1着」の枠場に入り、厩務員らに迎えられて「おめでとう」の祝福を受けた。
 
 デビュー週は11戦して2着3回、3着2回。ゴール目前で差し返され、クビ差の惜敗もあった。善戦が目立ち、初勝利の期待が場内に充満。リズム良く乗って、最高の結果を引き出した。

 ■2番手から理想的なレース展開 

 騎乗したスングリダンダンも通算25戦目で初勝利となった。陣営では「この相手なら時計的に優越感。うまく先行できれば」と送り出した。追い切りで乗った明星騎手も好仕上がりで手応えを感じていた。

 宮下瞳騎手騎乗の1番人気ティエラサンライズとの追い比べになり、2番手から理想的なレース展開で勝ち切った。単勝は400円。2着に宮下騎手、3着には最後方からよく追い込んだ深沢杏花騎手の女性陣が入り、3連単は7410円だった。

ジョッキー仲間やお母さんとともに初勝利の歓喜に浸った明星騎手

 ■「祝 初勝利」先輩ジョッキーが大盛り上げ

 装鞍所エリアでは早速「祝 初勝利 明星晴大騎手」の記念撮影が行われ、先輩たちが大盛り上げ。スタンドで観戦していたお母さんをスタッフが呼んでくる間も、晴れやかなショータイムのような雰囲気で、ルーキーを囲んで牧歌的な笠松競馬場ならではの温かい空気が漂った。

 お母さんの隣でゼッケン5番を掲げた明星騎手。笠松、名古屋の先輩ジョッキーたち12人がずらりと並んで、楽しいパフォーマンスも見せながら初勝利を祝福。春の日差しを浴びて明星騎手のスマイルが輝いた。

明星騎手を囲んで和やかな先輩ジョッキーたち

 ■「最後の直線半ばでは勝てると」

 「先生には『前の方に行け』と言われていました。(2番手から)位置取りもいい所につけられた。バタバタになりかけたが、4コーナから後ろの馬が来なかったんで、最後の直線半ばでは勝てると思いました」と勝利を信じて、夢のゴールへとなだれ込んだ。

 「(先生に)スタートをうまく出られたし、良かったねと。先輩の皆さんには『おめでとう』と声を掛けられうれしかったです」と祝福が相次いだ。

 ■名古屋の同期・望月洵輝騎手は2日で3勝

  東海公営では、名古屋競馬の同期・望月洵輝騎手(17、井上哲厩舎)が11戦目で初勝利を挙げた。この4月にデビューした地方競馬新人騎手では第1号の勝利。2日間で3勝を挙げ好ダッシュとなった。

レース後、1着ゴールを喜ぶ明星騎手

 望月騎手に先を越された明星騎手だが、初Vのタイミングとしてはデビュー19戦目、2開催目に達成できて「まずは良かったです」とホッとした表情を見せていた。

 ■お母さん「ドキドキした、勝ったかなあ」

 明星騎手は愛媛県新居浜市出身。地元から駆け付けたお母さんは4コーナー近くのスタンドで初勝利の勇姿を見守った。愛媛県内では前夜、震度6弱の地震はあったが、無事来場して観戦することができた。

 「ドキドキしていてよく覚えてませんが、(4コーナーでは)アタマを取っていたんでアーッと。大型ビジョンの画面でも見て勝ったのかなあ」と初Vに感激されていた。
 
 晴大騎手の父・晴道さんは競輪選手で、この日は小松島(徳島)でのミッドナイトレースに参戦。A級チャレンジ選抜で3着だった。笠松には来場できなかったが、お互い公営競技で戦うアスリート同士で、今後も刺激を受け合うことになりそうだ。 

明星騎手の応援幕を掲げ、初勝利を喜ぶ笠松競馬ファン

 ■ファンの応援幕も登場「さらなる飛躍を」

 ゴール前のスタンドでは明星騎手の応援幕も掲げられていた。ご家族もデビュー戦で出されていたが、岐阜市の若い男性ファンが新たに掲示した。ウマ娘ファンでもあり「ROAD TO THE TOP! 明星晴大」の文字が鮮やかで、勝負服をイメージした力強いデザインとなった。

 「笠松デビュー時から応援していました。名古屋の望月騎手には先を越されましたが、ようやく初勝利を飾ってくれてとてもうれしいです」と応援幕でVを後押し。「さらなる飛躍を。笠松といえばやっぱりアンカツさんなんで、将来的には『アンカツを超えろ』と期待したいです」と笠松の新星が勝利を積み重ねていくことを願っていた。

 ■長江、深沢、渡辺騎手よりも早い初勝利

 これまで笠松の若手では、松本一心騎手がデビュー戦でいきなり勝利。東川慎騎手もデビュー初日に5戦目でメインを制覇。佐々木朗希投手そっくりの長江慶悟騎手は21戦目、笠松のエースに成長した渡辺竜也騎手は24戦目で初Vをゲット。深沢騎手は36戦目で涙の初勝利となった。
 
 明星騎手にとっては、ジョッキー人生の記念すべき大きな1勝となった。長身を生かした伸びやかなフォームで、最終日には8番人気で2着、3着もあった。先行策が好きということなので3キロ減を生かす競馬も理想的。最初の直線での先陣争いでハナを奪って、次は逃げ切りで2勝目を決めたい。 

名古屋で期間限定騎乗の室陽一朗騎手(浦和)は笠松で4勝を挙げて大活躍

 ■室陽一朗騎手、笠松で1日3勝

 名古屋競馬での期間限定騎乗で好成績を残しているのは、浦和の室陽一朗(むろ・ひいろう)騎手だ。広島県出身で川西毅厩舎所属の22歳。今年で3年目を迎え、新天地での武者修行となった。

 名古屋ではデビュー戦など3勝。笠松にも参戦し1日3勝。2日目にも勝ち、9戦4勝と大ブレーク。明星騎手の「祝初V」の記念撮影にも顔をそろえて、笑顔で祝福していた。5月末までの2ヵ月間限定だが、相性の良い笠松での騎乗も増えそうだ。         

JRA交流戦を中央馬オーケーミネルバで制した渡辺竜也騎手。2着に田口貫太騎手

 ■JRA交流戦で渡辺騎手Vゲット、田口騎手2着

 JRA交流戦「太田宿特別」は渡辺竜也騎手が騎乗した5番人気のオーケーミネルバ(牝3歳、奥村豊厩舎)が鮮やかに逃げ切った。

 JRAから未勝利馬5頭。田口貫太騎手や永島まなみ騎手も参戦した。渡辺騎手は前走16着に敗れ、中央勢では最低人気馬に騎乗したが、ハナを奪うと快調な逃げ。2番手に田口騎手のタガノアウルが食い下がったが、1馬身半差で突き放した。交流戦で渡辺騎手は今年2勝目と勝負強さを発揮している。 

 このレース、明星騎手も自厩舎のキテヤイヨジ(牝3歳、後藤佑耶厩舎)で参戦。7番人気で先行集団にインから食らいつき、4コーナーでは5頭が一団となる激しい展開。最後は渡辺騎手がグイッと押し上げて1着ゴール。田口騎手が2着で続いた。

 明星騎手はJRA馬を相手に大健闘の5着。永島騎手を4馬身引き離して、笠松馬ではただ1頭、掲示板を確保した。まだデビューしたばかりだが、野球などで鍛えた身体能力は高く、今後の活躍を予感させるような一戦となった。

JRA交流戦を勝ち、馬主服姿で笑顔の渡辺騎手

 ■JRAと東海の若手らが火花散らし熱戦

 笠松でも観戦できるJRAと地元騎手とのガチンコ勝負。渡辺騎手と田口騎手がワンツーとなった攻防は見応えがあった。3着には秋山稔樹騎手が入り、若手騎手が火花を散らした。

 笠松、名古屋の騎手もJRA馬に騎乗できれば、1着賞金は450万円(1勝クラスなら650万円)でモチベーションもアップ。田口騎手は今年、笠松でのJRA交流戦で2勝。地方での交流戦勝利は「減量騎手」の勝ち星としてカウントされる。100勝突破で減量返上、一人前のジョッキーへの近道でもある。

 レース後、渡辺騎手はいつものV字勝負服ではなく、馬主服で笑顔を見せながら勝利の帰還でちょっと新鮮だった。2番人気で2着の田口騎手は「すみませんでした」と敗戦を謝る姿は、1年目デビューの頃と変わらず。お世話になった関係者への感謝の気持ちや責任感の強さが感じられ、爽やかだった。


※「オグリの里2新風編」も好評発売中

 「1聖地編」に続く「2新風編」ではウマ娘ファンの熱狂ぶり、渡辺竜也騎手のヤングジョッキーズ・ファイナル進出、吹き荒れたライデン旋風など各時代の「新しい風」を追って、笠松競馬の歴史と魅力に迫った。オグリキャップの天皇賞・秋観戦記(1989年)などオグリ関連も満載。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、206ページ、1500円。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー、酒の浪漫亭、小栗孝一商店、愛馬会軽トラ市、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。

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