オグリキャップ姿のウマ娘たち

 コスプレ・ウマ娘の女神たちが聖地降臨。トレーナーらの声援を浴びながら、現役時代のオグリキャップが何度も1着になったゴール板の前を力強く、華麗に駆け抜けた。

 イベント「仮装の宴2024」が1月28日、好天に恵まれた笠松競馬場で開かれた。昨年に続いて「仮装deレース&撮影会」として笠松町が主催し、県地方競馬組合などが協力。馬場を1~2周する新春ファミリーマラソン大会に続いて、ウマ娘たちのイベントが華やかに繰り広げられた。

レースに出場したウマ娘ら参加者全員。オグリキャップも走ったダートコースを駆け抜け、笑顔があふれていた

 ■出走枠倍増も抽選で3倍近い狭き門

 「仮装deレース」の出走枠は60人に倍増され、参加希望者は166人に激増。抽選で3倍近い狭き門を突破した精鋭が全国から集結。東海や関東を中心に大阪、石川、福井、新潟、香川などからも参戦した。出走回避のウマ娘もいたが、20~30代を中心に「ウマ娘 プリティーダービー」の実装キャラとトレーナー、スターター役らを含め約50人がスタートラインに立った。

オグリキャップの聖地で、一斉にスタートするウマ娘たち

 レースは「50メートル走」のスプリント戦で6Rまで実施された。高らかにファンファーレが鳴り響き「ウマ娘シンデレラグレイ」に登場した六平(むさか)銀治郎のコスプレ姿をした古田聖人笠松町長がスターターを務めた。「ウマ娘ファンにとって笠松競馬場は聖地」と町長一推しイベントがにぎやかに発進した。

 ■「行けー」「差せー」と大声援

 1~3Rに男性、4~6Rには女性が参戦。ウマ娘たちは華麗な勝負服やかぶり物に身を包んでパドック前からゴールに向かって猛ダッシュ。ラチ沿いからはトレーナー役の同行者らが「行けー、逃げ切れ」「差せ、差せー」と大声援を送ったが、ダートコースの深くて重い砂に悪戦苦闘し転倒者も続出。ゴール前は歓声と悲鳴、そして笑顔があふれた。5歳ぐらいの男の子の「ミニオグリ」も参加しており、オグリキャップはやはり幅広い世代に人気があった。

 参加者はゲームやアニメなどからウマ娘に興味を持って、一推しキャラに変身。JRAや地方競馬で実在した名馬、人気馬の活躍ぶりや存在価値にもこだわって実装した。

「メインレース」か。5Rでゴールへダッシュするウマ娘たちと大外のハリボテエレジー(右端)

 ■メインレースだ「ハリボテエレジー」逸走せずに完走

 最終6Rまで、かわいく奇抜な仮装者たちが激走。5Rでは「出た、ハリボテ」「きょうのメインレース」とラチ沿いから声が上がり、この日最高の盛り上がりを見せた。

 ノロノロとわが道を行く架空馬「ハリボテエレジー」。大外から前進気勢を見せたものの、ただ一頭独自の戦いとなった。それでも「オルフェーヴルのように逸走はしていないよ」とばかりに前進。ゆっくりと真っすぐに走り抜いて、他馬から大きく遅れて最後にゴールイン。参加したウマ娘たちは、全馬が無事完走を果たし、拍手と歓声に包まれた。

 レース後は仲間のカメラマンや同行者もコース内立ち入りが可能になり、撮影会がスタート。成績優秀者や注目を浴びたウマ娘たちに、レースの感想や実装した一推しキャラについて聞いてみた。

華麗な勝負服に身を包んだウマ娘。ダイワスカーレット(右)は逃げ切れるか
深い砂に苦しみ、ゴール直前で転倒

 ■ダイワスカーレット(岐阜市)逃げ切れず転倒

 ゴール寸前で派手に転んだのはダイワスカーレット。「痛かった」と悲鳴を上げ「大丈夫、生きている」と砂まみれになりながら苦笑い。参加者と健闘をたたえ合った。昨年はオグリキャップ姿だったが、今年はダイワスカーレットに変身。「推しの一番好きなキャラで参加して盛り上げたかった。全力で走って、逃げ切る気持ちでいましたが…」と残念そう。撮影では転倒シーンも狙っていたが、まさか昨年、丸金食堂で天ぷらうどんを完食していたオグリちゃんだったとは…驚かされた。

「1着・ハルウララ」がついに実現。優勝者に賞状が贈られた

 ■ハルウララ(大垣市)「1位の景色を見せてあげられた」

 地方競馬からは高知で「負け組の星」としてアイドルホースになったハルウララが参戦。見事1着でゴールインを果たした。「うれしい。足はもつれましたが、113連敗とレースでは勝てなかったハルウララに1位の景色を見せてあげられた。1カ月前から50メートル走の練習をしたり、腕立て伏せも続けてきた」とひたむきな努力を実らせた。「笠松競馬場でダートを走って、貴重な経験をさせていただき感謝の気持ちでいっぱいです。一緒に走った仮装者の方の熱気も伝わってきて頑張ろうと思った。マックイーンちゃんもかわいらしく走っていましたし…」と勝利の喜びに浸っていた。

メジロマッイーン(左)とスマートファルコンの華麗な姿

 ■メジロマックイーン(福井県)「こんな所で走れるとは」

 芦毛馬のメジロマックイーンは、紫の毛並みが目立っていた。福井県からの遠征で初めて参加。「2位だったんですけど、(笠松競馬場の)こんな所で走れるとは、貴重な体験でした。歩きにくいし、もっと硬い土かと思っていて、お馬さんはここを走っていてすごい」と砂が深いダートコースに驚いていた。マックイーン姿は「ウマ娘からですが、子どもの頃からコインの競馬ゲームもやっていて、競馬場にも行きたいと思っていました」とにこやかだった。

「仮装優秀者」にも選ばれたスマートファルコン(右)

 ■スマートファルコン(名古屋市)「メチャうれしい」

 「仮装優秀者」に選ばれたスマートファルコン。表彰式では古田町長と「笠松愛」を表現したハートマークも披露して、みんなの歓声を浴びた。賞をもらって「もう、メチャうれしいです。初めての参加で緊張しちゃって。ダートって走りにくい。でも馬は力強く走ってすごい」と感激。撮影会ではメジロマックイーンとツーショットの決めポーズも華麗に披露してくれた。

発馬機での撮影会。イナリワン(左)ら平成3強がそろい踏み、スタートポーズを決めた

 ■イナリワン(愛知県西尾市)ら「平成3強」そろい踏み

 現役の大井時代、笠松競馬場で実際に走ったことがあるイナリワン。コスプレ仲間との笠松愛あふれるイベントでもおなじみで、仮装deレース連覇を狙って出撃。「昨年は1着でしたが、今年は馬券外かも。イナリワンは昔、笠松でこけているんでね(全日本サラブレッドカップ2着)。今回は残念でしたが、楽しかった。参加者は知り合いも多いから、(いつも宴会モードの)丸金さんがメインです」とも。ゲートでは「平成3強」のオグリキャップ、イナリワン、スーパークリークがそろい踏み。力強いスタートシーンを決めて、ライバル対決を再現した。コスプレ仲間とは「笠松競馬、愛してまーす」の大合唱も披露した。       

大食いキャラでかわいいオグリキャップらが競馬場グルメを満喫した

 ■オグリキャップ(笠松町)「大食いキャラかわいい」

 ご当地・笠松町からもオグリキャップが参戦。「初めて走って、3着ぐらいでした。足が食い込む感じでダートは走りにくいですね。オグリキャップは『芦毛の怪物』で格好いい。ウマ娘のアニメから入って、大食いキャラでずっと食べていてかわいいから」とお気に入り。「笠松競馬場は食べ物も安くておいしく、人も温かいです」とにっこり。場内の寿屋で串カツやどてを買い求めて「おいしいです。ここに来たらビールもいいですね(車でなければ)」と地元愛あふれるオグリちゃんだった。

ポーズを決めるテイエムオペラオー(右)とアストンマーチャン

 ■テイエムオペラオー(三重県)「オグリちゃんのおかげ」

 発馬機前でスターターも体験したテイエムオペラオー。「昨年はシンボリルドルフでしたが、今年はオペラオーです。オグリキャップは未登録だった日本ダービーに出られなかったが、競馬の制度を変えて、クラシックレースに追加登録できるようになったんです」と力を込めた。「オグリちゃんがすごかったから、そのおかげで、けがが治ったオペラオーが追加登録で皐月賞に出走できました(優勝)」と、制度改正のきっかけになったオグリキャップの功績に感謝していた。

直線コースで曲がることはなく、手作好太郎の騎乗で懸命にゴールを目指すハリボテエレジー

 ■ハリボテエレジー(名古屋市)に「頑張れ、頑張れ」大声援

 「今年はこのキャラで勝負」と2回目の参戦。ウマ娘キャラではないが、かつてJRAの協力で公開された競馬ムービー・馬券予想ゲーム「ジャパンワールドカップ」に出走した架空のユニークなキャラクター。女性2人が段ボール製のハリボテの中に入って出走。マネキンの手作好太郎(てづくり・すきたろう)がジョッキーを務めて、笠松で熱い走りを見せてくれた。外ラチ沿いの最後方からゴールを目指すと「頑張れ、頑張れ」の大声援が飛んだ。

「声援を感じたし、笑いを取れて良かった」。レース後のハリボテエレジー

 レース後には「砂なんで結構沈んじゃって走りづらかった。でも面白かった。みんなの声援を感じたし、笑いを取れたことが良かった」とユニークな走りを披露できて満足そうだった。「地方ダートデビューで、温かい声援ありがとうございました。残念ながら7着でしたが無事完走できました」とネット上でも感謝のメッセージを述べていた。

 このほかのキャラでは、アストンマーチャン(愛知県)が「みんな速くてびっくりしました。ダートはフカフカで走りにくかった」。「ウマ娘プリティーダービー」に登場する黒沼トレーナー(小牧市)は上半身の肉体美も披露。「昨年は転んだが、外側を走るようにして無事走れた」とうれしそうだった。

抽選に外れ「ゲートイン」できなかったゴールドシップが2頭。ラチ沿いからコース内を眺め、ちょっぴり寂しそうだった

 ■ゴールドシップはラチ外でも人気

 昨年、夫婦で挑戦して盛り上げてくれたゴールドシップ(愛知県)は、ラチの外からレースを見守っていた。コースには入れないが、コスプレ姿での一般観戦は可能で来場。「(抽選で)今年は外れちゃいました」とちょっと寂しそうだったが、「夫婦で人生初馬券に挑戦(JRAの場外発売)。ウマ娘の抽選も馬券も外れましたが、お土産に串カツを10本買いました」。スタンド前では楽しいパフォーマンスで見せ場をつくり、盛り上げていた。

 「迷馬」ぶりでも人気を集め、愛されキャラのゴールドシップ。出走組では仮装優秀者に選ばれた女性もいて注目を集めた。ラチ沿いには、抽選に外れたゴールドシップがもう1頭。出走できないのに、わざわざ東京から駆け付けたという男性で、走りたそうにじっとコース内を見守っていた。

見事1着になり、表彰された各レースの優勝者
「仮装優秀者」として表彰されたウマ娘たち

 ■パドックにウマ娘たちの笑顔

 レース後にはパドックで表彰式が行われ「ウイナーズサークルみたい」と参加者。古田町長は「皆さんの力を借りて、明るく楽しく面白い町にしていきたい。おいしい物もたくさんあり、遊びに来てください」とあいさつし、イベント成功に感謝。各レースの優勝者と仮装優秀者6人ずつを表彰し、賞状と記念品がユニークな名称で贈られた。各表彰者に続いて、参加者全員でも記念撮影が行われ、パドックにウマ娘たちの笑顔があふれていた。

 撮影会ではウマ娘の「トレーナー」でもあるカメラマンたちが「普段は入れない所に入れて楽しいですね」と、育成するウマ娘たちの思い思いの決めポーズを激写していた。

「みんなオグリキャップ杯」のスタートシーン

 ■「みんなオグリキャップ杯」で大盛り上がり

 「オグリキャップの聖地へようこそ」。発馬機前には、いっぱい来場してくれたオグリキャップたちが大集合。ゴール近くで走るポーズを決めたり、ゲートでは「みんなオグリキャップ杯」で大盛り上がり。1~8枠まで全馬オグリで、フルゲートから一斉に飛び出したスタートシーンも撮影。決めポーズを続けて「腰が痛い」の声が上がったり、8枠のゲートが開かないアクシデントはあったが、コスプレ撮影会を存分に楽しんでいた。

 ■MVPハルウララ、敢闘賞テイエムオペラオー

オグリキャップ像ともコラボし、記念撮影を楽しんだ

 正門の外では愛馬会の軽トラ市も店開きし、にぎわった。オグリキャップ像前ではウマ娘たちが記念撮影。オグリキャップ、ダイワスカーレット、ナカヤマフェスタの3頭が参加。笠松競馬場のシンボルで「元気と勇気」のパワースポットでもあり、ウマ娘たちは爽やかなスマイルでイベントを満喫していた。

 この日、感想を聞けなかったり、抽選漏れになったウマ娘さんもいっぱいいたが、オグリの里が独自に選んだMVPは地方馬・ハルウララ(大垣市)。猛練習で走り込み、「114連敗を阻止して1位の景色」を見せてあげた。敢闘賞はテイエムオペラオー(三重県)。オグリキャップのおかげで、クラシック登録が可能になり、皐月賞を勝つことができた。実装されたアイドルホースたちの胸の鼓動と蹄の音が聞こえてきそうで、イベントは大いに盛り上がった。


 ※「オグリの里 聖地編」好評発売中、ふるさと納税・返礼品に

 「オグリの里 笠松競馬場から愛を込めて 1 聖地編」が好評発売中。ウマ娘シンデレラグレイ賞でのファンの熱狂ぶりやオグリキャップ、ラブミーチャンが生まれた牧場も登場。笠松競馬の光と影にスポットを当て、オグリキャップがデビューした聖地の歴史と魅了が詰まった1冊。林秀行著、A5判カラー、200ページ、1300円。岐阜新聞社発行。岐阜新聞情報センター出版室をはじめ岐阜市などの書店、笠松競馬場内・丸金食堂、名鉄笠松駅構内・ふらっと笠松、ホース・ファクトリーやアマゾンなどネットショップで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも加わった。