羊羹(ようかん)が青々としたササの葉にくるまれた和菓子の「笹巻羊羹」は、奥飛騨の自然と職人魂を"緑の器"に織り込んだ逸品だ。職人が自ら山野で採ったササの葉を使い、昭和初期に考案された製法で手間を惜しまず一つ一つ丁寧に仕上げる。程よい甘みにササの風味が加わる味わいは上品で気持ちも和らぐ。
スマホ見せてグルメ・買い物お得に 岐阜新聞デジタルクーポン笹巻羊羹は、岐阜県飛騨市神岡町船津の和菓子店「金木戸屋」の看板商品。店名は飛騨山脈から流れ落ちる双六川上流域にある金木戸という地名に由来する。創業から100年ほどで、3代目店主の金田幸夫さん(68)が中心となって笹巻羊羹を手作りする。
この銘菓の誕生を伝える秘話が興味深い。幸夫さんの祖父の亀蔵さんが山にキノコを採りに出掛けたが、なかなか見つからず、大きな岩に座って一休み。岩の周りで風に揺れる清らかなササの葉に目が留まった。帰宅して母親にその光景を伝えたところ、母親が「以前はササの葉を折り曲げて器にし、中に山の水を入れて飲んでいた」と懐かしそうに話した。母親の思い出にヒントを得て独自の和菓子を考え出し、工夫を重ねて笹巻羊羹を作り出した。幸夫さんの父の時夫さんが継ぎ、3代目が100年近くになる製法を守っている。
ササは神岡町近くの山野に自生するチシマザサで、幸夫さんたちが笹原で吟味しながら葉を集める。きれいにして葉の縁を少し切って形を整え、くるりと曲げて三角形の器を作り、祖父から受け継ぐ特製の型に曲げた葉を入れ、器の部分に熱い羊羹を注ぎ込む。息を止めるようにして素早く作業を進め、冷めたところで葉の残りの部分で羊羹にふたをして細く切ったいぐさを巻いて閉じる。
あんと羊羹も自家製だ。北海道産の小豆で時間をかけて作ったあんに砂糖と寒天を加えて羊羹を作る。笹巻羊羹のいぐさを解き、ササの葉を広げて見る羊羹は艶やかで、ササの葉脈が表面に浮かぶ。その銘菓に出合った感動を俳人中村汀女さんは著書に記した。
金木戸屋の和菓子は飛騨市のふるさと納税返礼品にもなり、笹巻羊羹に円い「満月最中(もなか)」やササの葉の粉末を生地に練り込んで焼いた「笹サブレ」などを詰め合わせたセットもあり、全国に発送している。
幸夫さんは「笹巻羊羹は自然が身近な神岡ならではの菓子。口に残るだけではなく、記憶にも残る和菓子を求め続けたい」と話す。













