「ほんとうは、こういう味だったのか。牛乳って。」-。これは社員の名刺に記されたフレーズ。関牛乳最大の特徴は低温殺菌(パスチャライズ)による生乳本来の風味を生かした牛乳や乳製品だ。
関市の住宅街にある同社本社。吉田宰志社長(51)の案内で入った工場内は、ステンレス製の銀色タンクやパイプが所狭しと配されていた。水を大量に使うため、湿度は高めだ。
関市や周辺市町の酪農家計5軒から届く生乳は、1日計約3千リットル。風味や酸度、細菌数などの品質検査をクリアした生乳は5度程度まで冷やし、ためた後、目に見えないごみやちりを取り除いて清浄化される。
その後、機械で脂肪分を細かくされた生乳はパスチャライザーと呼ばれる機械で65度に温められ、30分間かき混ぜられながら殺菌される。これがこだわりの低温殺菌だ。
国内では生産効率を高めるため、120度以上で2秒殺菌する超高温瞬間殺菌が主流だが、吉田社長は「さっぱりながら、コクや甘みも感じられるのが本来の牛乳」と低温殺菌にこだわる。タンク内では温められた生乳が、ゆっくりかき混ぜられる。隣のタンクからは「関珈琲(コーヒー)」の深く、香ばしい香りが漂ってきた。
殺菌された牛乳は再び16枚のプレートを通し、約5度まで冷却する。温めたり冷やしたり温度を一気に変えるのは、変質しやすい30~40度になる時間を少なくするためだという。
充填(じゅうてん)はすべて機械化。学校給食用などの180ミリリットルパックや、上部が屋根型のゲーブルトップ型(1リットル、500ミリリットル)の紙パック商品がラインに続々流れてきて、人の手でケースに手際よく納められている。
もちろん瓶製品も健在。瓶詰めは週3日、1日当たりで約4千本。温泉施設や宅配では根強い人気だ。従業員による瓶の表裏の目視点検にも余念がない。
飲料だけでなくサブレやミルクジャムなどのスイーツのほか、アイスなどの乳製品も多彩なラインアップを誇る。昨年からは廃棄乳問題に挑もうとクラウドファンディングを活用してバター生産を始めた。すべての商品の冠に「関」の文字が躍り、ストレートに関市産をPRするのも特徴だ。
飲み干すと4こま漫画が現れる学校給食用の瓶牛乳や、寺院でのミルク茶屋イベント開催、コラボ商品の開発など、消費拡大のための話題提供も欠かさない。「すべては本来の牛乳の味を知ってほしいから」。吉田社長の言葉が響いた。
【工場概要】1938年、現在の本社工場と同じ関市観音前に「吉田牧場」を開業。50年に「関牛乳株式会社」として法人化し、55年から低温殺菌牛乳の製造を開始。75年からは乳製品製造も手がける。従業員数31人(パート、アルバイト含む)。売上高は約4億円(2022年2月期)。



















