岐阜市の小学校である女性が一人芝居を上演しました。「いじめられた私の体験を基に、このお話をつくりました」。生まれたときから病気のある顔。この顔を子どもたちに見てもらって、伝えたかったのはどんな思いなのでしょう。

無料クイズで毎日脳トレ!入口はこちら

一人芝居を演じる河除静香さん=いずれも岐阜市上土居、常磐小学校

 富山県南砺市に住む学校司書河除静香さん(48)は、生まれたときから顔に動静脈奇形があります。血管の塊が口や鼻にあり、これまでに40回以上手術をしてきました。鼻血が出やすく大量出血で入院したこともあるといいます。

 「こんな顔だから、ずっと人前に出てはいけないと思っていた」。そんな河除さんが一人芝居を始めたのは2014年のこと。知人に紹介されたイベントで初舞台を踏みました。一人芝居を各地で上演したり、見た目問題を考える団体の代表として活動したりしています。

 岐阜市上土居の常磐小学校であった舞台。選んだ作品は「パンダのパン屋さん」でした。森に住むパンダさん。顔に病気があって、ちょっぴり引っ込み思案。だけどみんなと仲良くなりたくて、パン屋を開くことにしました。腕前には自信あり。おいしいパンを焼きますが、誰も食べてくれません。クマさんは「へんてこりんな顔のお前がつくったんだ、そのパンもへんてこりんだ」とパンを地面に捨ててしまいます。

パンを捨てるクマさん

 自身のいじめられた経験を基にしているといいます。小学生のとき、給食当番が嫌だったと振り返ります。「お前のような顔の人からご飯を配られたくない。そう言われて何もせずに突っ立っていました」。

 落ち込むパンダさん。そこに世界を旅する渡り鳥さんがやってきます。おいしいおいしいと食べてくれた後、クマさんにこう言います。

世界を旅する渡り鳥さん

 「私はいろんなものを見て、いろんなことを知っている。世界にはいろんな動物がいる。一匹一匹、見た目も性格も違うんだ。(中略)見た目が違うからって友だちにならないのはすっごく損なことさ。それに、こんなおいしいパンを食べないなんて本当にもったいないよ!」

 一人芝居が終わった後、河除さんは子どもたちに打ち明けました。「私もいじめられていました。パンダさんと同じく、私もひとりぼっちでした」。そんな自分自身が惨めで、助けてと周囲に訴えることができませんでした。「助けてほしい、と言えばよかった」。

話を聞く子どもたち

 子どもたちに呼びかけます。「つらいことがあったとき、助けてーと言える勇気はとても大事だと思います」。

 一人芝居のラストで、パンダさんとクマさんは友だちになります。それも河除さんの体験が反映されているそう。「いじめられていた同級生たちと今は仲良くしていて、私の活動を応援してくれています」。

 「この顔で生まれて、つらいこと、苦しいこと、いっぱいあったし、これからもあるかもしれない」。河除さんは言います。「それでも、この顔に生まれたからこそ出会えた人、家族がいます。この顔に生まれたけど、一回しかない人生。楽しもう、幸せにしていこうと思っています」。子どもたちからは大きな拍手が送られました。

 

(取材・文 馬田泰州)