「飛んだ!飛んだ!」。国の特別天然記念物トキが被災地の空に羽ばたいた。放鳥場所となった石川県羽咋市余喜地区周辺には今も、地割れなど2024年元日の能登半島地震の爪痕が残る。「気持ちが明るくなった」。見守った住民らは高く舞い上がる姿に復興への希望を重ねた。

 市内の気温は今年最高の30度近くまで上昇した。強い日差しの中、田んぼ脇の道路には多くの人が並び、カメラや双眼鏡をのぞき込んでその瞬間を心待ちにした。午後3時半ごろ、最初のトキが飛び立つと「きれい」「すごい」と声が上がった。

 同市の女性(79)は「自宅近くの建物が解体されて寂しい気持ちがあったが、トキを見て明るくなった」。22年から放鳥のために活動してきた能登トキファンクラブの宮下源一郎会長(78)は「とても力強い飛び方だった。被災地に元気をもらえた」と笑顔を見せた。

 今後は定着と繁殖にも期待がかかる。日本鳥類保護連盟石川県支部の林哲支部長は「飛んでくれてホッとした。今日は大事な一歩目」と話した。