リラックス効果・ポジティブ感情の向上などを確認

2026年9月24日
積水ハウス株式会社

 積水ハウス株式会社(以下、積水ハウス)の研究機関である「しあわせ住まい研究所」は、このたび、大阪公立大学健康科学イノベーションセンター(水野敬特任教授)との共同研究により、「夜の庭が見えるリビング」で過ごすことが心身の疲労回復を促す可能性があることを、実証を通して確認しました。

 研究実証では、被験者が疲労負荷を受けた後に「夜の庭が見えるリビング」と「外が見えないリビング」でそれぞれ過ごした結果を比較したところ、「夜の庭が見えるリビング」で過ごした後は副交感神経の活動働きが高まり、リラックスした状態となったほか、ポジティブ感情が試験実験開始時を上回る水準まで高まりました。一方、「外が見えないリビング」で過ごした後では、疲労感やストレスが疲労負荷をかける前の状態までには戻らず、生産性低下作業効率低下の傾向も見られました。これにより、夜間でも外の自然を感じられる住環境は、単に視覚的な心地よさを高めるだけでなく、心身の回復と日常のパフォーマンスを支える新たな居住価値になり得ることが分かりました。

 積水ハウスは、夜の庭を取り込む住まいについて、実証研究で得られた知見を設計提案へ反映し、暮らしの中で自然に疲労回復を促すする住まいの実現を目指していきます。

 

               「夜の庭が見えるリビング」のある家



【実証概要】

1.背景

  今日の人々の暮らしは、心理的・環境的なストレスや慢性的な疲労が蓄積しやすく、心身の健やかさや日々のパフォーマンスを支える「回復」のあり方が重要です。住まいは、日常の中で心身を回復させる場として大きな可能性を持つ一方、日中は外で仕事をしている人にとって在宅時間は夜間が中心であり、時間帯に合わせた空間提案が求められます。実際に、お引き渡しから約10年が経過したオーナー様との会話の中で、「仕事が終わった夜に、外を眺めながらゆっくり過ごすと疲れが取れる」という声や、外とのつながりを感じながらも外からの視線は避けたいという想思いを伺いました。こうした声が、夜の住まいでの過ごし方や、外とのつながり方に着目するきっかけの一つとなりました。

 そこで本研究実証では、外部からの視線に配慮しながら、夜間にも屋外の自然や灯りを感じられるリビング空間が、暮らしの中での疲労回復や心理状態にどのような影響を与えるのかを検証しました。

 

2.実証機関

 本研究実証は、積水ハウスの研究機関「しあわせ住まい研究所」と、大阪公立大学健康科学イノベーションセンター(水野敬特任教授)にて合同で行いました。「しあわせ住まい研究所」は、人や家族にとっての「幸せ」と、それを支える住まいのあり方を、多角的・科学的に追究研究する研究機関です。

 

3.実証方法 

<実証手順>
① 実際の暮らしに近い環境で検証するため、夜間の住宅展示場に、植栽を施し、大開口サッシやクリアビューデザインでつながった「夜の庭が見えるリビング」と、「外が見えないリビング」の2つのリビング環境を用意

② 28名の被験者が、画面に表示された数字の正誤を瞬時に判断する疲労負荷作業を30分間行った後、リビングにて30分間休憩。「夜の庭が見えるリビング」と「外が見えないリビング」それぞれで本行程工程を実施

③ 試験実証開始時、疲労負荷作業後、休憩後の3時点で各種評価を行い、2つのリビング環境における変化を比較

 

 

<評価項目>

・脈波による自律神経系評価

脈波を測定し、自律神経機能の状態を評価。試験実証開始時、疲労負荷作業後、休憩後の変化を比較するほか、試験検証中継続して計測した脈波も評価

・VAS(Visual Analogue Scale)による主観評価調査:

「癒し」「リラックス」といったポジティブ感情や「疲労感」「ストレス」といったネガティブ感情の計1010項目を評価

・パフォーマンス評価

画面上に表示された数字と文字を、指示された条件に従って選択し、作業パフォーマンスを評価

 

 

 

 

3.研究実証結果

 「夜の庭が見えるリビング」で休憩した場合、心身の回復を促す可能性があることを確認しました。具体的には、①リラックス効果、②ポジティブ感情の向上、③生産性作業効率低下の抑制が示されました。

 

①リラックス効果

 「夜の庭が見えるリビング」でのみ、休憩後にリラックスや休息の状態をつかさどる、副交感神経指標が高まりました。また、この変化は休憩開始後5分間で大きく高まったことから、短時間でも効果が得られる可能性があることがわかりました。

 

 

②ポジティブ感情の向上

 「夜の庭が見えるリビング」では、休憩後に「癒し」「心が豊か」と被験者が感じた数値が疲労負荷前を上回り、「疲労感」「ストレス」は疲労負荷前と同程度まで低下しました。一方、「外が見えないリビング」では、「疲労感」「ストレス」が疲労負荷前より大きく上昇しているのがわかります。

 

 

 ③作業効率生産性低下の抑制

 「夜の庭が見えるリビング」で休憩した場合、その後のパフォーマンス評価によるエラー数の増加が抑制し、疲労感や集中力が試験を通して作業効率が低下しなかった実証前と同じレベルに戻ったことがうかがえます。

 

 

 

4.「夜の庭が見えるリビング」にお住まいのオーナー様の実際の声

 積水ハウスは、周囲からの視線を適切に遮り、カーテンレスな暮らしが可能な庭を所有するオーナー様にヒアリングを行いました。その一部を紹介します。

 

・夜の庭をぼんやり眺めることが、気持ちを整える時間になる
「仕事で煮詰まった時に庭を見る」「疲れた時にぼーっと眺める」「疲れた時は夜寝る前にベンチに座って庭を眺める」などの声がありました。庭を日常のふとした瞬間に眺めることが、リラックスや気持ちの切り替えにつながっている様子がうかがえました。

 

・家で過ごす時間が豊かになり、家族の会話も生まれる
「夜にTVを見る時間が減った」「夜に家にいるのが楽しい」といった声に加え、「雨や雪の風景も魅力的」「鳥や蝶が訪れる」「花が咲く様子や落葉の美しさを楽しめる」など、庭の植栽や四季の変化を身近に感じられるという意見も聞かれました。また、庭を眺めたり、その変化について家族で語り合う新たな過ごし方が生まれ、在宅時間や家族が集まる夜の時間の充実や、家族間のコミュニケーションにつながる傾向が見られました。

 

・日々変化する景色だからこそ、入居当時から飽きない空間を楽しめる
「夜のライトアップは絵を見ているようだ」「花が咲いたときにライトアップされた美しさは、日常の手入れの手間を忘れさせてくれる」「雨が降ると塗れたタイルに紅葉が映り込んできれいだった」「夜は葉の形よりも色が浮かび上がってくる。綺麗なのでよく写真を撮っている」などの回答が得られました。季節や天候、光や影、植物の成長によって表情が変わることで、長く暮らしていても庭を眺める楽しさが続く傾向が見られました。

 

 今回のヒアリングは、研究実証を通じて夜の庭を眺めることの心身の効果が期待される一方で、入居から年数が経過すると庭への関心が薄れるのではないかという懸念のもと実施しました。しかし実際には、庭や植栽への愛着が深まり、季節の経過などを家族で楽しみながら生活している様子がうかがえました。

 

5.今後の展開

 今後は、本研究実証で得られた知見も活かしながら、子どもから高齢者まですべての世代がいつまでも、心身ともに健やかに暮らし続けるための「ウェルエイジング研究」を進めていきます。日々の暮らしそのものが、いきいきと自分らしくいられることにつながるような住まいのあり方を探究し、新たな提案につなげてまいります。