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職場でノンアル飲みたい! 同僚「だめでしょ」 あり?なし?



 「会社でノンアルコールビールを飲みたい」―。

 真っ昼間の職場で唐突に衝動が湧き上がった。新型コロナ禍で夜の街に行けないストレスからか、梅雨の蒸し暑さのせいか。本心ではビールをプシュッといきたいところだが、さすがに会社でそうはいかない。気分だけでもとノンアルコールビールを買ってくると、同僚から「それはだめだろう」と冷たい視線が飛んできた。「ビールじゃないのに?」。職場でノンアルコールビールを飲む行為は非常識なのだろうか。

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職場でノンアルコールビールを飲むのは「非常識」なのだろうか(本文と写真は関係ありません)

 同僚に聞いてみると「ノンアルコールビールにも、少しアルコールが入っているはず」との指摘があった。酒税法を調べると、ノンアルコールビールは「アルコール度数1%未満」と定義され、確かに0・5%など基準内で微量のアルコールを含む商品がある。妊娠中の女性やお酒に弱い体質の人は注意が必要だ。ただ、大手メーカーはいずれもアルコールが全く入っていない「0・00%」の商品をそろえており、これらは清涼飲料水と同じく飲んでも酔うことはない。

むしろ飲んだ方がいい?

 個人的には自宅でノンアルコールビールを愛飲しており、今も3ケース(72本)が冷やされるのを待っている。お酒と違って酔わないから車を運転できるし、睡眠の質も上がって、翌日の体調に響くこともない。味や香りはお酒に近づいているし、カロリーゼロや糖質ゼロといった付加価値の高い商品も多い。中には「内臓脂肪を減らす」とうたった機能性表示食品もあり、むしろ職場で積極的に飲んだ方がいいとさえ思えてくる。

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コロナ下で需要が増えたノンアルコールビール。「ケース買いも多い」と藤井康雄店長=岐阜市岩崎、酒アルコ岐阜北店

 世間はどうだろうか。「コロナ前に比べて、アルコールとノンアルコールのどちらもよく出ている」と話すのは、酒販店「銘酒の森 酒アルコ岐阜北店」(岐阜県岐阜市)の藤井康雄店長(30)。新型コロナウイルスの感染拡大で、飲食店が営業時間の短縮やアルコールの提供自粛を強いられ、「家飲み」が増加しているためとみられる。

 コロナが流行した当初、同店では比較的高価なお酒の売れ行きが好調だったという。しかし外出自粛や時短営業が続き、消費者が〝長期戦〟を覚悟したのか、次第にノンアルコール商品や機能性商品へと流れていった。「財布に優しいし、コロナ太りも気にしたんでしょうね」。うなずきながらペンを走らせた。

市場規模は10年で2倍

 サントリービール(東京都港区)によると、2020年のノンアルコールビールの国内市場は推計1980万ケースで、10年前に比べて2倍に拡大。同社広報部は、職場でノンアルを飲むことの賛否は「回答を控える」とした上で、「ノンアルコールビールを飲んでいただくシーンは広がっており、皆さんの好きなタイミングで楽しんでもらえたら」と話す。

 そういえばコロナが流行する前だが、ビールメーカーの中には夏場、来客にお茶を出す代わりにノンアルコールビールを出していた会社もあった。商品の紹介にもなり、来客もうれしい。アフターコロナのスタンダードになってくれないだろうか。

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味や香りはお酒に近づいたが、酔わないため気軽に楽しめると人気だ=岐阜市岩崎、酒アルコ岐阜北店

同僚の飲酒を誘発する恐れ

 コロナ下で人気が高まるノンアルコールビールだが、職場で飲む行為には問題があるのだろうか。堅いイメージの官公庁に聞いてみよう。岐阜県庁の人事課は「アルコールもノンアルコールも、就業規則では特に禁じていない」という。しかし「仕事中の飲酒禁止は常識。ノンアルコールビールもお酒の代わりに飲むものなので、現代の社会通念上、仕事中に飲むことは認められない」ときっぱり。

 愛知、岐阜に拠点を持つ弁護士法人フルサポート(岐阜県可児市)の西面将樹代表弁護士は「業務命令で禁止された場合、命令に合理性があれば従わなければならない。ノンアルコールビールを飲むことは、ビールを飲んでいるとの誤解を招くので、他社員の飲酒を誘発したり、顧客の信頼を失ったりする恐れがある。飲酒を禁止する必要性の高い職場や、飲んでいる姿が顧客に見られやすい職場ならば、ノンアルコールビールを禁止する業務命令に従う必要があるだろう」と指摘する。

「お酒」の楽しみ方も変化

 健康志向を追い風に市場を広げてきたノンアルコールビール。確かに周囲の誤解を招きやすい面はあるが、熱中症予防が必要な暑い夏に爽快感が味わえ、酔ったり眠くなったりといった体への影響もない。何よりコロナ禍で抱え込んだストレスを発散させる一助になるなら、明らかな健康被害をもたらす喫煙などより、よほど優等生の嗜好(しこう)品ではないか。テレワークの普及など、職場の在り方や働き方が変化しているウィズコロナ時代。夜の宴席がない日々は、「お酒」の楽しみ方を見つめ直す機会にもなっている。

カテゴリ: くらし・文化 グルメ 新型コロナウイルス 社会 経済




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