気軽に利用できる場所へとスタイルを一新させた図書館
図書館開館時に〝知的情報のスーパーマーケット〟を掲げた梶井芳景さん=安八町氷取、町立図書館
出前図書館事業の準備をする職員ら=安八町氷取、ハートピア安八

 岐阜県安八郡安八町立図書館は、1人当たりの図書貸し出し冊数の割合が県内の公共図書館の中で1位の座に輝く。全国の同規模自治体の図書館の中でも、年間貸し出し冊数が3位に入ったことがある人気の図書館だ。なぜここまで貸し出しが多いのか。その背景を探った。

かんたん検索! 岐阜県・東海のイベント お出かけ情報総合サイト「ぎふっと!」

 訪れたのは、町立図書館がある町生涯学習センター「ハートピア安八」(同町氷取)。船越浩海館長によると、日本図書館協会の図書館統計2020年度版に、18年度の統計がまとめられている。統計では、人口1万5千~2万人未満の自治体91町村(当時)の中で、安八町の年間貸し出し冊数は18万2千冊で全国3位。開館1年後の04年から15年にわたり、5位までの上位に入り続けている。また、県図書館が発行する県内公共図書館・町村図書室調査集計表によると、20年度の冊数を人口で割った数値は11・17冊。全国平均の5冊を上回り、県内ではトップだった。

◆県立図書館と差別化「情報のスーパーマーケット」

 船越館長は実績の背景を「開館時に独特の運営方針を打ち出していたからでは」と話す。そこで「県内の図書館職員の間では有名人」(船越館長)という、開館当時の館長・梶井芳景さん(73)を訪ねた。

 図書館に関わり約50年という梶井さん。県立図書館職員として同館移転新築に携わったほか、揖斐郡池田町立図書館の開設にも関わり、今もアドバイザーとして選書のサポートを担う。梶井さんは「県立がデパートならば、町の図書館は毎日の生活で使うスーパーマーケット。県立図書館とはそろえる本を選ぶ視点を変えた」と立ち上げ時の方針を教えてくれた。

 03年開館の安八町立図書館は"知的情報のスーパーマーケット"を掲げ、これまでの研究などで使う資料性の高い書物を所有するスタイルではなく「気軽に利用できる場所」へとスタイルを一新。日常で楽しめる本や教養を高める本、実用書などを中心にそろえ、専門性の高い学術書のニーズは、県立図書館などへの資料要求で応えたという。

◆学校でも読書活動推進

 また、小学生のために06年からは「出前図書館活動」を開始。絵本などお薦めの約500冊を詰めたコンテナを携え、職員が小学校を訪問する事業で、今も町内の3校で毎月行われている。ほかにも、中高生向けのコーナーや職員お薦め図書のコーナーを充実させるなど、若い世代の本との出合いを進める取り組みを続ける。

 奮闘する図書館の姿を受け、町は16年から「読書のまち 安八」を掲げ、学校での読書活動推進にも力を入れはじめた。町内の小学校をオンラインで結び、本の読みどころや感想を児童が紹介しあう「ビブリオトーク交流会」を開くなど、読書の輪は子どもたちの間でも広がり、本の貸し出しにもつながっている。渡邊均教育長は「子どもたちのこうした読書活動は、町立図書館の積極的な姿があってこそ」と強調する。

 梶井さんは取り組みの広がりを「町民性があるとは思わないが、便利な図書館を誰もが待っていたのは確か。安八の図書館は、そのニーズに応えることができているということ」と分析している。

 町立図書館も、県の緊急事態宣言を受けて休館を余儀なくされていた。しかし宣言解除後の1日は、さっそく大勢の町民が訪れ、開館前には列ができた。男性(47)=同町西結=は「2週間に1回は来ていたので、当たり前のように本が読めることにありがたみを感じた。再開に合わせて借りに来ました」と、女性(39)=同町牧=は読書好きの長女(11)と訪れ「子ども向けの図書のコーナーが広いので、子育て世代には利用しやすい図書館。今日を待ってました」と再開を喜んだ。安八町はこれからも"読書のまち"として全国に名をはせていくだろう。