夏の友を手に、担任と夏休みの計画を練る児童。岐阜県ではおなじみの光景だ=山県市岩佐、美山小学校
県内の歴史や自然についての読み物など、多彩な内容を盛り込んだ今年の夏の友。イラストを切り抜いて貼ることでオリジナルの表紙が完成する

 子どもにとって待ちに待った夏休み。小学校時代に休み中の生活や学習をサポートする冊子「夏の友」に取り組んだ思い出がある人も多いだろう。実は全国的にも珍しい、岐阜県の情報満載の、岐阜県の教員による、岐阜県の児童のために作られた独自の冊子だ。全国各地にあった同様の冊子は、時代の流れとともに徐々に姿を消しつつあるが、岐阜県では教員の情熱により今も変わらず70年以上発行が続く。

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 7月中旬、山県市岩佐の美山小学校2年生の教室では、学級活動の時間に夏の友を児童に配布し、夏休みの過ごし方の計画を練った。「作りたい物、やりたいことを見つけて楽しい夏休みにしよう」と担任が呼びかけると、児童たちは掲載された工作や伝統行事の写真を見ながら「恐竜を作りたい」「夏祭りに行きたい」などの声を上げた。県内では夏休み前のおなじみの光景だ。

 冊子の歴史は終戦直後から70年を超える。戦後の小中学校の教育体制が整い、県教職員組合が1949年に発行した「夏の子」を始まりとし、53年に「夏の友」となった。発行は64年に県小中校長会に移り、現在は県校長会館(岐阜市菅原町)となっている。

 編集委員会は、現職の県内の小中学校の校長や教頭、教諭ら約50人。内容は少しずつ見直され、掲載する児童の作品や作文は、毎年全て差し替える。教諭らは総括、読書、郷土読み物、家庭地域、宝物、学習、表紙の7領域に分かれて担当し、冊子も7領域で構成される。

 時代ごとに大きな改訂が行われ、当初は学習や作文のページが大半を占めていたが、74年に健康や研究、遊びなどの領域別の内容になり、77年からは編集委員会も領域別に構成され、児童の興味や関心を大切にした編集が進められた。夏休みのガイドブックとして読み物中心になり、現在では88~92ページのうち学習は2割程度になっている。

 内容も古里の自然や歴史を学んだり、平和の尊さを伝える読み物に加え、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)や情報モラルなど、現代社会の話題も取り上げ変化している。

 冊子の購入は学校全体や、学年単位、希望者のみなど、各学校の判断によるが、今年の購入率は県内公立小児童の88%と高く、学校単位での採用率は100%となっている。

 ただコロナ禍の2020年は、夏休み短縮の影響などで、希望者のみとする学校が増えた。保護者が県校長会館に直接購入に訪れることもあったといい、約30年編集に携わる女性(61)は「岐阜で育った人にとって、夏といえば当然のような存在になっており、うれしかった」と喜ぶ。

 全国では、同様の冊子は1965年ごろから、民間の出版社の問題集などに変わるなどして姿を消し、残っている県は珍しいという。編集委員長で美山小学校長の山田和弘さん(59)は「夏休みに岐阜県の子どもたちに豊かな経験をして感動を味わってほしいと、教員が自分の足で取材して作ってきた。先輩教員の情熱を引き継ぎ次の世代へつなげたい」と意気込みを語る。