閉館する見通しになった飛騨プラネタリウムと大矢正樹館長=高山市清見町夏厩
飛騨プラネタリウムで鑑賞できる映像作品「銀河鉄道の夜」の一コマ=2016年6月撮影
飛騨プラネタリウムの外観。東海北陸自動車道がすぐ近くを通る

 岐阜県高山市清見町にある飛騨地域唯一のプラネタリウム「飛騨プラネタリウム」が、施設の老朽化のため2023年3月31日までに閉館する見通しになった。昔ながらの外観とは裏腹に、著名なCG作家の作品を上映して人気を博してきた、知る人ぞ知る施設。閉館後は学校として生まれ変わる予定もあり、大矢正樹館長(70)は「本物の飛騨の星空にも関心を持ってほしい」と話す。

かんたん検索! 岐阜県・東海のイベント お出かけ情報総合サイト「ぎふっと!」
飛騨プラネタリウムで鑑賞できる映像作品「銀河鉄道の夜」の一コマ(2016年6月撮影)

 年季の入ったピラミッド状の建物が、市営の飛騨プラネタリウム。1989年、星空のきれいな地域に住む人に、宇宙へ関心を持ってもらおうと、約1億4993万円で旧清見村が建てた。ドームは直径9メートルの半球。市町村が運営するプラネタリウムとしてはかなり小さい。豊富な雪を生かし、かつては巨大なかまくらに星空を投影するなどのイベントで人気を博した。1万人以上の来場者を記録した年もあったという。

巨大かまくらの天井に投影された星座。2010年まで毎年開催されていた人気イベントだった

 最大の特徴は、全国的に有名なCG作家・KAGAYAさんが手掛ける全天周番組をほぼ毎日上映していることだ。いずれの作品もプラネタリウムでの上映を想定しており、星空の神話や童話を題材に展開される神秘的な映像は全国にファンがいる。全7作品が見られるのは、全国でもこの館だけだという。

 CG作品を主に上映する独特のスタイルの裏には経営努力があった。館長の大矢さんは、勤めていた会社の廃業を機に古里の旧清見村へ戻り、1998年に合宿場「清見里人学校」の運営者になった。高山市への合併後の2008年、公共施設の運営を民間に委託する指定管理制度が導入されると、合宿場の隣にあるこの施設を市から管理者として引き受けた。入館者の減少にあえいでいた施設の活性化が狙いだった。

 ところが1年たっても状況は変わらなかった。指定管理初年度のプラネタリウムの来館者数はわずか約500人。全く来館者がない日も少なくなかった。星空の解説に長けた若手職員を雇用して運営していたが、「このままではだめになります。やめさせてほしい」と言われ、何とか引き留めながら営業を続けた。指定管理の契約はあと2年残っていた。

飛騨プラネタリウムのロビーには、幻想的なアート作品がずらりと並ぶ

 気鋭のアーティストとの出会いが流れを変えた。「何か誘客の手はないか」と漫然と本棚を見つめていた時、KAGAYAさんの1枚のパンフレットが目に入った。プラネタリウムで上映する全天周番組「銀河鉄道の夜」が一世を風靡していた頃だった。

プラネタリウムの投影装置。全天周番組を放映するために更新した

 大矢さんはKAGAYAさんの事務所に「頼むから助けてほしい」と電話をかけた。全天周番組を扱えるように、投影機材メーカーのモニター館に手を挙げ、交渉の末に上映が決定。毎年平均して7千人以上の人が来るようになった。

 大矢さんは「飛騨弁丸出しのSOSだった。今思うと『よく図々しくも電話できたな』と思う」と笑った。「昔ながらのプラネタリウムを目指すよりも、きれいな映像作品を楽しんでもらうことに特化するしかなかった」と振り返る。

 全国からファンを集めるようになった飛騨プラネタリウムも、時の流れには逆らえない。天球をよく見ると部材同士の継ぎ目が目立つ。上映する番組の見え方にも影響があり、画面が明るくなるとさらに目についてしまう。天球部分だけでも1千万円以上の修繕費がかかることが分かった。

閉館する見通しになった飛騨プラネタリウムと大矢正樹館長

 施設は近く、新しい姿に生まれ変わる。高山市によると、隣接する合宿場と合わせ、民間へ有償で譲渡する計画が進んでいる。譲渡先は通信制高校の開設を目指す愛知県の法人。学校設置の認可が通れば、校舎として活用される見通しだ。

 閉館について大矢さんは「十分やりきった。潮時かなと感じる」と話し、「(合宿場は)自然の中で子どもたちがのびのびとできる施設。プラネタリウムと一緒に、また教育の場として活用してもらえるのはとても良い話だ」と、閉館後への期待を語った。

飛騨プラネタリウムの外観。東海北陸自動車道のすぐ近くにある

 飛騨プラネタリウムは11月30日までのキャンペーンとして、全天周番組7本の上映のほか、季節の星座解説などを実施している。昼間は涼しいプラネタリウムで、夜は高地の美しい星空で、夏の夜空観察を楽しんでみてはいかがだろうか。投影料は大人500円から、4歳以上~高校生は300円から。入館には電話予約が必要、番号は0577(67)3407。

 

取材記者

 
 
稲木悠司(いなぎ・ゆうじ)2017年岐阜新聞社入社。遊軍、ひだ高山総局、飛騨支局を経て本社デジタル報道部。山深い地域で取材を重ねるうちに登山が好きになった。ライチョウを見つけるのが得意。