教員が逆立ちを披露するなど和やかな雰囲気で行われた入学式。「従来の形にとらわれない学校にしたい」との思いを表した=7日午前、岐阜市金宝町、草潤中学校

 ある教員は壇上で逆立ちを披露し、ある教員はゴルフクラブを持って華麗にスイング、またある教員は着ぐるみ姿だった。この春、岐阜市に開校した不登校特例校・草潤中学校の入学式での一場面。従来の形にとらわれない式にしたいと教諭らはそれぞれが服装やあいさつの内容で、自分らしさを前面に押し出した。井上博詞校長は式辞で「ここは公立学校の在り方に一石を投じる、未来の学校です」と力を込めた。

 不登校の子どもを対象に特別の教育課程を編成して教育を実施する、不登校特例校。同校では生徒たちがそれぞれのペースで学べるよう、学校へ通って授業を受けることを前提にしないで、オンライン授業を組み合わせながら個々に授業の計画を立てる。

 3学年計40人の生徒がいる。入学式があった7日は入院中の1人を除き全員が学校に来ることができた。学校側は「入学式が終わった後、しばらくは通学する子と自宅からオンラインの子と半々ぐらいになるのでは」とみていたが、その後も連日、8割ほどが学校での授業を選んでいる。授業をしている教室とは別の部屋に入ってオンライン授業を受けたり、テントやハンモックのある図書室で過ごしたりといった時間を挟みながら、それぞれの学びのペースを構築しつつある。

 文部科学省によると、2019年度、不登校の中学生は全国で12万7922人に上った。主な要因は、統計上は「本人に係る状況」の項目にある「無気力、不安」が約4割。「いじめ」は全体の0・3%にとどまるが、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」は17・2%と主な要因で2番目に多い。複合的な要因がある場合が多いものの、同校でも人間関係の悩みが不登校のきっかけの一つにあるという生徒が、全体の約3分の1を占めているという。

 「もっと何かできなかったか、今でもずっと考えている」。井上校長は市立中3年の男子生徒がいじめを苦に自殺した「重大事態」が起きた19年、市教育委員会の学校教育審議監兼学校指導課長として問題に向き合った。いじめ防止のための方針が事態発生前からありながら、学校現場が機能しなかったのはなぜか。学校現場は子どもたちのことを本当に理解できていたのだろうか―と自問した。重大事態を機に進んだ再発防止策の構築と徹底に「今できているなら、重大事態が起きなくても本当はできたはずだ」と悔やむ。

 21年度の初日、井上校長は教員たちに、こんな言葉を送った。「一人の生徒を粗末にするな。一人の生徒を粗末にすると、教育は光を失う」。「たった一人の生徒と思うな。たった一人の生徒でも、保護者にとっては命懸けの子どもだ」