大舞台で活躍するトップアスリートは、勝負をものにしたり、ピンチを脱したりする技を必ず持っている。東京五輪・パラリンピックの開幕まで、2カ月余り。岐阜県ゆかりの選手がこれまでの競技人生で培い、磨き続ける「十八番(おはこ)」を紹介する。
◇ ◇
ホッケーで大きな得点源となるセットプレーのペナルティー・コーナー(PC)。わずか数秒の間に繰り広げられる多彩な攻防が見ものだが、このPCで他のチームの脅威となっているのが、山田翔太(岐阜朝日ク)の代名詞「フリックシュート」だ。昨年の日本リーグでは、このシュートだけで計8得点。シーズンの個人全得点をたたき出し、2年ぶり優勝の立役者となった。
フリックシュートは、スティックを押し出すように振ってスピードあるボールを放つシュート。球威、速度ともにホッケーでは最もハイレベルなシュート技術の一つで、山田のこれまでの最速は国内最速クラスの114キロだという。
「十八番」たるゆえんは、昨年の日本リーグ第2戦。7―3と完勝した試合の中心にいたのは、5得点した山田だった。いずれもPCからのフリックシュートで、成功率は100%。周囲に衝撃を与えた。昨シーズンは、勢いそのまま2年ぶり3度目の得点王に。PCでフリックシュートを打つ「フリッカー」として、日本代表での存在感を高めた。
しかし、ここまでの道のりが平たんだった訳ではない。
フリックシュートで得点することが増えた2~3年前のシーズンは、相手から研究されてブロックされることが多くなり、全く入らない時期も経験した。「打ってもディフェンスに防がれるかもしれない」。マイナス思考になればなるほど、ゴールは遠ざかった。
切り替えたのは、技術ではなく、メンタル。「相手を気にしすぎて、打つ前から気持ちで負けていた」と山田。ディフェンスに当ててもいい覚悟で打つように開き直ると、武器は輝きを取り戻した。さらに、タイミングや打ち方を工夫し、同じシュートでもバリエーションを増やしたことで得点力は増した。
五輪代表候補では他にも強烈なフリックシュートを打てる選手はいるが、五輪の大舞台に向けて「全てのPCで自分にフリッカーを任せてもらうようになる」と技術を磨く。究極の目標は、大舞台での決定率100%。「達成が難しいのは分かっている。けれど、少しでも近づきたい」。日本代表を支える26歳は、静かに闘志を燃やしている。
【極意】
その一、助走から振り抜くまで一連の動作を素早く行う
その二、脱力した状態でボールを捉え、スティックから打ち出す瞬間に一気に力を加える
その三、腕の力だけでなく腰の回転や手首を意識して打つ








