大舞台で活躍するトップアスリートは、勝負をものにしたり、ピンチを脱したりする技を必ず持っている。東京五輪・パラリンピックの開幕まで、2カ月余り。県ゆかりの選手がこれまでの競技人生で培い、磨き続ける「十八番(おはこ)」を5回にわたって紹介する。
かんたん検索! 岐阜県・東海のイベント お出かけ情報総合サイト「ぎふっと!」ボクシングの東京五輪男子フライ級日本代表の田中亮明(中京高教)は右利きだ。右利きの選手の多くは左手、左足を前にする右構えだが、田中は逆。"デビュー戦"での敗戦をきっかけに、左構えに転向した。今では、その構えから繰り出される左ストレートが絶対的な武器となっている。左手でつかんだ五輪切符。次はその左手で一番輝くメダルを獲得してみせる。
中学1年で競技を始めた。当初は右構えだったが、3年生になり、初めて出場した大会が大きな転機となった。自信を持って臨んだ試合だったが、まさかの判定負け。「自分には才能がないと思い、やる気をなくしてしまった」。気持ちをリセットするために取り組んだのが、サウスポースタイルへの転向だった。
中京高時代の部活の監督で、元プロボクサーの石原英康はサウスポーだった。「石原さんは現役時代、左ストレートで相手を倒すのがスタイルだった。自分もストレートを磨きたい」。身近に指導を請うことができる恩師の影響もあり、その威力に磨きをかけた。
ただ、甘くはなく、最初の1年は試合で全く勝てなかった。「大変だったが、やると決めた。必ずものにする」。強い信念で練習を重ね、右手で相手の視界をふさいで繰り出す左ストレートが、いつしか自慢の一撃へと変貌を遂げた。「基本的には右ジャブからの左ストレート。シンプルだが、一番自信がある」
武器を最大限に生かすため、左アッパーやジャブも繰り返し練習し、精度を高めた。外への手数を増やし、内への意識が薄れたところでボディーに左ストレートを打ち込む。パンチを打つリズムを小刻みに変えることで、的確にヒットさせる技術も身に付けてきた。
3月下旬に茨城県で開かれた日本代表の強化合宿。約1年ぶりの実戦で4試合を戦った。ここでも国体優勝経験者や全日本選手権上位者ら強豪相手に、十八番が次々にさく裂。特にボディーへの左ストレートが有効だったといい、随所に決めて全勝した。「五輪に向け、自信になった」と改めて手応えをつかんだ。
東京五輪を「ボクシングを長いことやってきた集大成を見せる場」と位置づける27歳。「目指すは金メダルしかない。左ストレートで倒したい」。威力抜群の武器を手に大舞台に挑む。








