岐阜県中津川市北部にあるブラシメーカー赤田刷毛工業。長年培ってきたペンキ刷毛の製造技術を生かし、生活を豊かにする美容ブラシや日用グッズを製造している。繊細な毛材について熟知した従業員が手作業で仕上げ、“毛が抜けにくい”美しい商品を生み出し続けている。
氏名や役職・部署名で検索!「岐阜の経済・人事情報 ポータル」製造工程は基本的に手作業で、美容ブラシに使う毛材は、ウィッグにも使われる太さ50ミクロン(0・05ミリ)の化学繊維(化繊)。束になった数十万本の極細毛を金属製のリングに通し、その底部には細長いヒノキを3本押し込む。ヒノキを入れるのは、抜け毛を防いで密集した毛の内部に空間をつくって、泡立ちをよくするためだ。抗菌作用にもつながっているという。
さらに接着剤でリングに毛材を固定し、バリカンで刈って毛の長さを整えた後に、機械で「先付け」と呼ばれる工程を行う。毛先の表面を研磨して滑らかな感触にする工程だ。この工程を経ると、手触りが驚くほど変わる。4代目の田口泰平社長(82)は「極端な言い方をすると毛先が円錐形になる。毛の柔らかさと相まって気持ちいい手触りになる」と説明する。ヒノキ製の柄を接着して製品になるが、最後も金ぐしで毛を繰り返しといで、より滑らかに、毛全体にこしが出るように仕上げている。
毛材には化繊や植物繊維のほか、ヤギや豚、馬などの動物毛がある。それぞれ毛質や太さ、硬さに特長があり、製品に合わせて専用機械を使い、均一に混毛していく。ふわふわの洗顔泡を作るのに適したホイップブラシでは、水分や細かい空気を含むヤギ毛、復元力が持ち味の豚毛、ウェーブ状の化繊などを混ぜた毛材を使っている。近年は環境配慮や動物毛の仕入れ難もあり、商品によっては化繊への転換も進めている。
中国製の安価な刷毛に押される中で、オリジナル商品の開発を地道に進めてきた。新型コロナウイルス禍でヒットしたのはキッチンブラシ。毛材には植物繊維と豚毛を使い、鍋やフライパンをはじめ、調理器具の表面を傷つけずに洗うことができるようにした。開発に関わった田口美保さんは「洗剤要らずで、環境にも優しい」とPRする。
近年は自社販売に力を入れており、今春には電子商取引(EC)サイトを立ち上げた。田口社長は「いかに速く、きれいに仕上げることができるかは、手ではなく心が大事。これからも常にユーザー目線で、高付加価値の製品を作っていきたい」と力を込める。
【工場概要】1925年に神戸で創業、京都で61年設立した。京都で事業を伸ばし、70年に刷毛の持ち手の一大生産地だった旧加子母村(現中津川市)に移転した。独自の機械化で塗装用、食品用、工業用などの刷毛を幅広く手がける。従来の刷毛製造が落ち込む中で、洗顔専用ブラシのブランド「ALTY」を立ち上げるなど生活用品や雑貨の開発に注力している。従業員8人。中津川市加子母。










