岐阜の郷土料理に「天下の絶品」とうたわれる食材がある。へぼだ。秋が旬だと言われている。岐阜県恵那市串原では、郷土料理を守ろうと地域の女性らでつくる「へぼがーるず」が奮闘している。なぜ彼女らはへぼにこだわるのか。調理の現場を訪ねると、彼女らの郷土愛が見えた。
スマホ見せてグルメ・買い物お得に 岐阜新聞デジタルクーポンクロスズメバチの幼虫や成虫
「へぼ」は、体長約2センチで、地中の中に巣をつくる「クロスズメバチ」の幼虫や成虫を指す。海から離れた岐阜では、へぼは貴重なタンパク源として食べられていたほか、珍味として地元の住民から親しまれてきた。東濃や中濃地方では、しょうゆや酒などで煮込んだ「へぼの甘露煮」や「へぼご飯」が郷土料理として知られている。
串原は人口687人、世帯数は299。18歳以下の子どもは79人(11月1日現在)と少子高齢化が進む。一方で、へぼに親しむ人が多く、串原には全国地蜂連合会の事務局がある。串原に住む三宅正子さん、平林真衣さん、安藤菜月さん、川上ひとみさんは、「へぼがーるず」として、串原の祭りなどでへぼ料理を振る舞っている。
へぼの味をダイレクトに
メンバー全員が恵那市内内出身で、子ども時代からへぼに親しんできた。長年、祭りなどでへぼ料理を振る舞ってきた団体「田舎じまん」が高齢化を理由に2017年に解散したことを受け、2019年に郷土文化を守ろうと彼女らは立ち上がった。
地元の女性らにレシピを教えてもらい、試作を繰り返した。メンバーの安藤さんは「しょうゆひと回し、酒はちょろっとなど、教えてもらったレシピはざっくりしていて感覚をつかむのが難しかった」と話す。「へぼの味をダイレクトに味わえ、甘すぎないように」と調味料の量を調整し、味を追究した。
3キロのへぼを調理
11月3日に串原で開かれた「くしはらヘボ祭り2022」では、へぼご飯約100パックとへぼ五平もち約470本を準備した。祭り当日は朝5時から準備に取りかかった。材料には、地元串原で捕れたクロスズメバチ計3キロを使用した。しょうゆや酒などでへぼを煮込み、米6升と一緒に炊いてへぼご飯を作った。事前にへぼを煮込んで味を付けるのがポイントだという。米とへぼはふっくらと炊き上がり、平林さんは「米の芯が残らないかが心配だった。うまくできた」と胸をなで下ろした。
へぼ五平もちは、しょうゆで煮込んだへぼをすりつぶし、ピーナツとみそと合わせタレを作る。普通の五平もちよりも香ばしいのが特徴で、安藤さんは「へぼはすりつぶしてあるので、苦手な人でも食べやすい」と話す。
「もう売り切れたの」
祭り当日、へぼがーるずは自ら店頭に立った。どちらも約2時間で完売し、「もう売り切れたの」「残念」など、会場では料理を楽しみにしていた人の声が多く聞かれた。
へぼがーるず代表の三宅さんは「へぼは串原の大切な郷土料理。後世にへぼ料理の味を引き継げるよう頑張りたい」と話す。調理からへぼ料理完売まで、終始彼女らは楽しそうだった。彼女らは平均年齢42・5歳の、串原の「お母さん」。調理中は、子どもの修学旅行や、あしたの弁当の話で盛り上がっていた。平林さんは「ここは小さなまちやけど、ええとこやお」と教えてくれた。強いへぼ愛の裏には、「地元を元気づけたい」という郷土への思いがあった。




