トンネル掘削工事が止まっているリニア中央新幹線瀬戸トンネルの工事現場=19日、中津川市瀬戸(本社契約ヘリから)

 リニア中央新幹線の瀬戸トンネル(岐阜県中津川市瀬戸)の工事現場で作業員2人が死傷した事故から27日で1カ月。JR東海はトンネル掘削を停止し、安全対策を構築するため原因究明を急いでいる。県が安全対策の徹底を強く求める県内3工区の山岳トンネルについても掘削を中断する事態に発展しており、リニア建設工事の先行きは不透明になってきた。

 「調査中。まだお話できることはない」。25日に同市内であった安全推進協議会の初会合後、JR東海名古屋建設部の梅村哲男担当部長は調査状況についてこう答えた。県警が業務上過失致死傷の疑いを視野に捜査を進める中で、詳しい事故状況は見えてこない。

 JR東海は原因究明を進める一方、トンネル先端部で岩盤の表層が崩れる「肌落ち」による災害防止対策を徹底するため、瀬戸トンネル以外の山岳トンネル13工区の掘削も中断した。作業員の安全教育を行い、当初は現場の安全管理を確認した後に再開する方針としており、11月初旬には日吉トンネル南垣外工区(瑞浪市日吉町)、第一中京圏トンネル大森工区(可児市大森)、中央アルプストンネル山口工区(中津川市山口)の県内3工区の工事も再開する算段だった。

 だが県はJR東海の対応は不十分と判断した。県内では2019年4月に山口工区であった土砂崩落に続く2度目の重大事案で、今回はリニア建設工事に伴う初めての死者。「3度目は絶対にあってはいけない」(県リニア推進室)。事故の検証結果を踏まえた安全対策を報告した上で、県内3工区の掘削を再開するように要請した。

 瀬戸トンネルの事故から2週間もしないうちに長野県豊丘村のトンネル工事でも作業員1人が負傷する事故が発生した。事故翌日の定例会見で、古田肇知事は相次ぐ事故の検証結果とともに安全対策の報告を求める県の姿勢を示し、「全体として私どもとして評価をさせてほしい。そこまでは工事については待っていただく」と述べた。

 山口工区で土砂崩落が発生した時の工事中断は約7カ月に及んだが、他のトンネル工事に大きな影響はなかった。山口工区では中断前、リニア中部総合車両基地(同市千旦林)の土地造成に使うトンネル掘削土をダンプカーで工事現場に運び入れていたが、今回の事故以降それもできなくなった。トンネル工事以外のリニア関連工事にも影響が広がっている。

 同市の青山節児市長は24日の定例会見で「県と歩調を合わせて再発防止を求めていく」と述べ、工事中断による影響を注視する姿勢も示した。山口地区のリニア対策協議会の可知和人会長は再開時期が見えず苦労する地元の下請け業者からの相談もあるといい、「今後どうなるのか見通しだけでもいいので示してほしい」と地元の願いを話す。

 【リニア中央新幹線瀬戸トンネル崩落事故】 10月27日午後7時20分ごろ、中津川市瀬戸の瀬戸トンネル工事現場で発生。非常口トンネル(斜坑)の発破作業を終え、作業員5人が不発の火薬が残っていないか確認している際に、切羽と呼ばれるトンネル先端部で肌落ちが発生するなど岩石の崩落が2回起こった。男性作業員(44)が岩石の下敷きになって死亡し、助けに行った男性作業員(52)も巻き込まれて左足首を折るなどの重傷を負った。リニア建設工事による死亡事故は初めて。