―エネルギー問題や環境問題も解決するか。

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 後藤 核融合炉で問題は全て解決する、ということはない。低レベルだが放射性廃棄物は出るし、燃料は無尽蔵だとしても核融合炉を造る材料の一部には一つの国が95%のシェアを持つものもあり、政治的な問題が起きる可能性がある。電気料金が今より高くなることも予想される。

 ではなぜ研究するのか。核融合は圧倒的に難しく、科学者としてワクワクする。個人的にはガンダムのようなものが実現する未来を見たい。再生可能エネルギーだけで日本の電力を賄うことはできるとは思う。だが、その技術の延長線上にガンダムは見えない。核融合の延長線上にガンダムは見える。

 核融合を使いこなせるようになると、人類は一段階上に行けるんじゃないか。半分冗談だが、銀河連邦からお声がかかるかもしれない。違う世界が見えるんじゃないかと思っている。

―岐阜で研究が続いている

 後藤 岐阜県でずっと研究してきたヘリカル型核融合が日本、世界のエネルギーを賄う存在になって、岐阜発の技術として知られるようになればうれしい。

 ごとう・たくや 1981年、神戸市生まれ。86年に父親の転勤に伴い各務原市に引っ越し。99年岐阜北高校卒、東京大学教養学部理科I類入学。東大の大学院で博士(科学)取得後、2008年に自然科学研究機構核融合科学研究所(土岐市)に助教として着任。21年、同研究所の研究者らと共同で株式会社「Helical Fusion」を設立した。

 

松尾一輝さん(EX-Fusion提供)

レーザー核融合で新たな光産業創出 岐阜市出身・松尾さんに聞く

―これまでの経緯は。

 松尾 大阪大学大学院を修了し、米カリフォルニア大サンディエゴ校で核融合の研究に従事。レーザー核融合の商用炉の実用化を加速するため日本に帰国し、2021年に「EX―Fusion」を起業した。

―なぜベンチャー企業で核融合を進めるのか。

 松尾 核融合の分野では世界中で民間投資が進んでいる。18年設立の米国の企業は2千億円調達した。国の投資だけでは十分ではない。

 その中で、レーザー核融合商用炉を目指すことは、新たな光産業を創出することだと思っている。レーザーは制御が難しく、核融合に使う燃料は数ミリと小さい。究極の制御技術が必要とされる。一方、レーザー加工や半導体製造などすでに実用化された技術がある。商用炉の十分の一の規模でも宇宙デブリの除去ができる。レーザー核融合は応用範囲の広い技術を使っており、産業と雇用を生み出す。私たちは今月、オーストラリア政府と基本合意書を結び、技術交流をすることにした。

―先日、米国の研究所がレーザー核融合で投入分を上回るエネルギーを得たと発表した。どう思ったか。

 松尾 いつか達成するとは思っていたがこんなに早くとは思わず、率直に驚いた。

 科学実証が進み基本原理が立証できたことで、仕様が決まった、という状態。どういうレーザーが必要で、どういう規模感で商用炉を運転しないといけない、という予測がついた。日本は商用炉に特化して研究開発してきた強みがある。われわれの技術を使って開発してくれたらと思う。

 これから、レーザー核融合は学術研究から開発研究に明確に移行すると思っている。来年はそのメモリアルな年になる。日本の技術は高く評価されており、歴史もある。アドバンテージを生かし、勝ちにいきたい。

―岐阜市の出身。

 松尾 曽祖父が松尾国松、祖父が松尾吾策といい、親子で岐阜市長だった。2人とも頑固だったらしい。これだ、と決めたら曲げない性格だったと聞く。

  私もレーザー核融合という誰も実現したことのないことに、ベンチャー企業を起業してチャレンジするというのは、客観的に見てリスクの大きい行動だと思う。だが私自身は、これからの世界にとって必要なことだと思っている。そこは曲げることはない。今後も国が諦めようと、レーザー核融合の商用炉実現に向けた私の思いが揺らぐことはない。

 まつお・かずき 1992年、岐阜市生まれ。2011年岐阜北高校を卒業、関西大に進学。大阪大学大学院で博士を取得。カリフォルニア大学サンディエゴ校で核融合を研究。21年、レーザー核融合商用炉の実現を目指して株式会社「EX―Fusion」を設立。日本物理学会若手奨励賞受賞。