3千メートル級の山々で救助活動に当たる岐阜県警山岳警備隊飛騨方面隊。本格的な夏山シーズンの到来を前に今月中旬、御嶽山(3067メートル)で救助訓練に取り組んだ。2014年の噴火からもうすぐ7年が経過する中、近年夏の登山者は増加傾向。記者が訓練に密着すると、隊員同士の連携の大切さや、新型コロナウイルスの感染拡大下での救助活動の難しさが見えてきた。
かんたん検索! 岐阜県・東海のイベント お出かけ情報総合サイト「ぎふっと!」隊員14人は午前8時30分、岐阜県側登山口の一つの濁河温泉(下呂市小坂町落合)に集合した。駐車場にはすでに10台前後の乗用車が止まっており、登山者のグループが次々出発していた。隊員はロープやヘルメットなどの装備を確認し、準備運動を行って出発。今回の目的地は標高約2800メートルにある五の池小屋だ。
御嶽山では2014年9月に大規模な噴火が発生し、58人が死亡、5人が行方不明となっている。近年は登山者数が増え、今年5月には40代の男性が下山中に約300メートル滑落し右足首を骨折するなど、登山中の事故がたびたび発生している。県警山岳警備隊は今回、こうした登山者への啓発を兼ねて御嶽山を訓練場所に選んだ。
この日、初めて御嶽山に登る新入隊員もいた。今年4月に入隊した高山署の直野(なおの)廉(れん)巡査(21)は、山深い飛騨市神岡町出身。持ち前の体力を人命救助に生かそうと入隊を願い出たという。「この時期にしては登山者が多い。初めて登る山なので少し緊張しているが、素早く救助ができるように頑張りたい」と意気込んだ。
山小屋までの道のりは約4・7キロ、標高差は約1130メートル。訓練を含めて午後5時までに終える計画だ。道中では残雪の上を歩くなど油断できないコースで、10~15キロの荷物を背負った隊員が積もった雪に足を取られつまずく場面も。ふもとで13、14度だった気温は、山小屋付近ではおよそ3度。刺すような冷たさの風も吹き、夏山でも防寒具は欠かせない。
正午ごろに山小屋に到着した後、標高約2400メートル付近の広場まで下りてから、救助訓練を実施した。遭難者が足を負傷して自力で下山できない状態を想定。専用のベルトを使って遭難者役の隊員を背負い、運ぶ隊員を交代しながら登山口の濁河温泉へ下った。
実際の救助活動では新型コロナ対策が欠かせない。この日の訓練でも、遭難者に直接触れることを想定し、防護服の代わりにレインコートの上下を着たまま訓練した。マスクも着用したまま救助活動に当たるため、隊員の負担が増し、例年よりも過酷な訓練となっていた。
救助で最も大切なのは隊員同士の連携だ。「(木道が)腐っているかもしれないんで横を通って」「交代はまだ大丈夫か」などと、数メートル先を歩く隊員が遭難者を運ぶ隊員に頻繁に声をかける。前と左右に3人の隊員が補助として支える。万が一の滑落に備え、別の隊員が遭難者の背中に取り付けたロープを引いて守った。
記者も体重73キロの隊員の救助を体験させてもらった。ベルトのおかげで重さが分散したが、隊員に支えてもらわないと歩き出すこともできなかった。隊員歴30年で、この日の訓練を指揮した高山署の逢坂(おおさか)宏裕樹(ひろゆき)警部補(57)は「遭難者を運ぶのがどれだけ得意でも疲れはたまる。もっと声を出してお互いの状況を伝えるように」と隊員に指示した。
訓練の最後に、夏山登山の注意について逢坂警部補に聞いた。逢坂警部補は「山は逃げていかないので、天気や体調など条件のそろう時に登ってほしい。計画をしっかりと立て、必ず登山届を身内と届け出ボックスに出し、少しでも『おかしいな』と思ったら引き返す勇気を持って」と話した。










