一人でも多くの女性が、思い描く人生を歩めるように。

「わたしのキャンバスプロジェクト」は、一人でも多くの女性が子宮頸がんをはじめとした婦人科系疾病にくじかれず、思い描いた人生を歩んでほしいという願いのもと、年間を通して女性の健康を啓発・応援していくキャンペーンです。

presented by 岐阜新聞女子net

 

vol. 03 女性ホルモンと女性のライフステージ

女性ホルモンは妊娠・出産だけでなく、女性が毎日をいきいきと過ごすために欠かせない働きをします。

その量はライフステージ毎に増減し、女性の身体に様々な変化をもたらします。女性ホルモンと上手に付き合いながら生活するための工夫を専門家に伺いました。
 

教えていただいたのは・・・

PROFILE

岩砂病院・岩砂マタニティ
安田 香子 産婦人科医

 揖斐厚生病院、岐阜大学病院を経て、2002年から岩砂病院・岩砂マタニティに勤務。
 

女性ホルモンにはどのような種類と役割があるのですか?

 女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)があります。成長期の二次性徴をおこして成人体型へ体の成長をうながします。主な働きとして月経周期をつかさどりますが、それ以外にも、抗動脈硬化作用、骨量の維持、皮膚のコラーゲンの合成促進など、身体の健康維持にも重要な役割を果たしています。
 

ライフステージごとの身体の変化は?またかかりやすい病気等はありますか?

 

♡思春期に起こる身体の変化

 思春期は、身体的・心理的にも発達をする時期ですが、女性では、視床下部・下垂体・卵巣の一連のホルモン分泌が確立され、卵巣からの女性ホルモンが増加することで二次性徴が起こり、女性らしい体つきになっていきます。一般的に、乳房発育、陰毛発生、初経(初潮)という順に進みます。満18歳になっても初潮がおこらない状態を原発性無月経といいますが、若い年代でエストロゲンが低い状態が続くことは将来の骨塩量にも影響する可能性がありますので、15歳になっても初潮がない場合には産婦人科を受診することをお勧めします。

♡性成熟期に起こる身体の変化

 過多月経・過少月経、月経困難症、性感染症、妊娠出産、PMSなど、思春期の女性も含め、性成熟期にはさまざまな女性特有の疾患がおきてきます。症状の重さも様々で、例えば、生理痛などの月経困難症では、ほとんど症状がない人が約20%程度しかなく、さらに、鎮痛剤を使用しても日常生活に支障がある人が約6%、重度に支障がある人が約2%との調査結果もあり、何らかの検査・治療が必要だと思われる方が少なくありません。また、女性ホルモンの状態により年を経ることで症状が重くなる疾患もあります。女性の健康特性を良好に維持することは、本人・周囲・社会のQOLをより良くする可能性があります。

♡更年期に起こる身体の変化

 女性特有の乳がん・子宮がんは、40歳代50歳代から多くなりますが、30歳代での発症もみられ、授乳期にも妊娠関連乳がんも報告されています。更年期には、女性ホルモンの減少により、不正出血など様々な症状が現れますが、生理的な正常な症状なのか病気なのかは、日頃より定期的に健診等を活用し自分の健康状態を知っておくことで、疾患の早期発見につなげることができたりします。更年期障害は、症状も重さもおきる時期も様々です。生活習慣病もでてきやすい時期です。更年期症状を機に、自分の健康状態を再チェックしてみてはいかがでしょうか。

♡老年期に起こる身体の変化

 エストロゲンの減少による膣萎縮により分泌減少が起こり、そのため膣の自浄作用が弱まり萎縮性膣炎を発症する事があります。ホルモン治療で症状が改善したりします。また、骨盤を支える靭帯が、低エストロゲンにより弛緩したり長年の加重負荷のために弱くなったり、子宮が下がってくる子宮脱の状態になることがあります。骨盤底筋体操、ペッサリーによる補助、つり上げ術など、色々な治療が行えるようになってきています。
 

平均寿命が延びている中、閉経後の人生をより健やかに過ごす工夫はありますか?

 身体活動をより健やかに保つために、活動の低下の原因になる骨折を予防することは大切です。やせすぎても太りすぎても骨折がおきやすいので、良好な体重の維持と適度な運動を継続しましょう。喫煙と飲酒は骨折のリスクとなりますので、禁煙や飲酒の制限に心がけましょう。また、骨塩量の低下は骨粗鬆症のリスクになりますが、思春期に骨量形成のピークを迎えることから、骨量の維持にも関わるエストロゲンを若い頃から良い状態で保つことも、将来の健康維持のために大切なことです。産婦人科のかかりつけ医を持って下さい。思春期から老年期までの身体変化を相談し易くなると思います。
 

教えていただいたのは・・・

PROFILE

ピノキオ薬局 加野店
河村 陽子 店長

 1981年岐阜薬科大学を卒業。ピノキオ薬局設立時から薬剤師として勤務。
 

生活環境や食事を改善し女性ホルモンと上手に付き合おう

 女性ホルモンの分泌量の増減に伴い、女性の身体には様々な体調の変化が起きます。変化がつらい場合、医師による治療はもちろん大切ですが、日々の生活環境や食事を見直してみるのも一案です。

冷えないように体を温める

 体を温める事は月経痛や下腹部痛を和らげる効果があります。カイロなど温めるアイテムをフル活用して冷やさないようにし、温める食事を多めに取りましょう。

適度な運動により全身の血行を良くする

 ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど自分が「気持ちいい」と思える緩やかな有酸素運動がおすすめです。

バランスの良い食事

 一汁三菜を組み合わせた多くの栄養素を摂取できる食事をベースに、ライフステージに合わせて女性ホルモンによる不調を整える食材も取り入れましょう。動物性脂肪量が多いとエストロゲンが増え、子宮内膜が厚くなって生理が重くなったり、脂肪が蓄えられ肥満に繋がったりするので、これらが多い脂っこい食事は少なく。ビタミンBやEを含む食品(玄米・豆腐など)は肝臓の働きを良くするため、エストロゲンのレベルを下げるのに役立ちます。時にビタミンB6は炎症を鎮め、筋肉をリラックスさせ、月経痛を和らげてくれます。またカルシウム、マグネシウム、カリウムなどのミネラル類もPMS(月経前緊張症)や生理中のむくみにも効果があると言われています。小魚、小松菜、ブロッコリーなど野菜も多く取りましょう。

 更年期はエストロゲンが減少し、コラーゲン、水分保持能力が低下します。これを補うため似た働きをするイソフラボンを多く含む大豆食品を取り入れましょう。カルシウムが骨から流出しやすくなるため、カルシウムやマグネシウムの補給も大切です。

 


主催|岐阜新聞社
後援|岐阜県医師会 岐阜市医師会 岐阜県産婦人科医会 岐阜市産婦人科医会