一人でも多くの女性が、思い描く人生を歩めるように。

「わたしのキャンバスプロジェクト」は、一人でも多くの女性が子宮頸がんをはじめとした婦人科系疾病にくじかれず、思い描いた人生を歩んでほしいという願いのもと、年間を通して女性の健康を啓発・応援していくキャンペーンです。

presented by 岐阜新聞女子net
 

vol. 04 妊孕性の目線から立てるライフプラン

妊孕性(にんようせい)とは妊娠するために必要な能力のことを指し、妊娠するために必要な臓器と機能と言い換えることができます。

この能力は加齢によって変化するため、 晩婚化が進む現代では不妊治療を選択するカップルが増えています。

ライフステージごとの妊孕性を知り、自分のライフプランと照らし合わせてみましょう。

【PROFILE】
操健康クリニック 常勤婦人科医師
堀 昌志 先生

 1989年藤田医科大学を卒業し、岐阜大学産婦人科へ入局。1996年岐阜大学大学院を卒業し、博士号を取得。東海中央病院産婦人科部長等を経て、操健康クリニック婦人科部長に至る。
 

女性の妊孕性に影響する2つの要素

♥卵子の数と質

 女性は卵子の元となる卵胞細胞を、体内に200万個ほど蓄えて産まれてきます。この卵胞細胞は胎児期をピークに1日30~40個ずつ減少し、閉経に至るまで増加することはないといわれています。また年を重ねるごとに卵子の質も低下し、受精しても着床できなかったり、流産・早産のリスクが高まったりします。

♥女性ホルモンの分泌量

 女性ホルモンと呼ばれるエストロゲンとプロゲステロンの分泌量も、女性の妊孕性に大きな関わりがあります。エストロゲンは「妊娠の準備」、「女性らしい体格形成」、プロゲステロンは「妊娠の維持」といった役割を担っています。この2つのホルモンの分泌がおよそ1か月周期で入れ替わるように増減し月経や排卵を促します。しかしそれぞれの分泌量は30歳前後をピークに減少していきます。

 このように受精に欠かせない卵子の数と質、そして妊娠・出産をサポートする女性ホルモンの分泌量の変化によって妊孕性も年齢ごとに異なってきます。中でも20~35歳はこの2つの要素のバランスが良く妊孕性の高い年代と言えるでしょう。

Q.月経が来ていれば妊娠できる?
A.月経ではなく排卵の有無が妊孕性を左右します。

 「月経の有無=妊孕性の有無」と考えがちですが、これは大きな間違いです。妊娠に置いては「排卵の有無」が重要です。確かに排卵があった場合、着床しなかった卵子が子宮内膜と共に月経として体外へと排出されますが、排卵しなかった場合でも月経はやって来ます。排卵すると2週間ほど高温期が続くため、心配な方は基礎体温をチェックしてみましょう。

Q.男性の妊孕性も加齢によって変化する?
A.精巣がある限り妊孕性はありますが、加齢とともに少しずつ機能は低下します。

 去勢状態にはならないものの、成人男性の精巣は加齢と共に徐々に小さくなり、男性ホルモンをつくる力も緩やかに低下します。精子の質の低下によって、自然流産の確率も上昇するといわれており、女性の年齢や他の要因の影響を除いても、男性の40歳以上は女性の30歳以上に相当するという報告があります。WHOの調査でも、不妊の原因が男性側にある場合は約48%とされています。
 

不妊治療について

 不妊とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年以上妊娠しないことをいいます。ただし先送りで成果が下がるリスクを考慮すると、定義を満たしていなくても早めに検査や治療に踏み切った方が良い場合があります。

 不妊症の治療には主に次の表の様な種類があり、原因に応じて最適な方法を選択します。選択した治療法で妊娠が得られない場合には、高度な治療への移行がすすめられます。

【不妊治療法】

タイミング法

排卵日に合わせて性交をすることです。超音波検査で卵胞の発育をチェックしたり、尿中のLHというホルモンを調べます。

排卵誘発法

内服薬や注射で排卵を促す方法です。排卵障害の場合に使用しますが、排卵があっても、人工授精の妊娠率を上げる目的で使用する場合もあります。

人工授精

マスターベーションで採取した精液から良好な精子を回収して、排卵の時期に子宮内に注入する方法です。

生殖補助医療 (体外受精、顕微授精)

卵巣から卵子を取り出し、体外で精子と受精させ、数日後に子宮内に受精卵(胚)を戻す方法です。精子と卵子が自然に受精しない場合、あるいは精子数が極端に少ない場合は、細い針で精子を卵子の中に注入する方法(顕微授精)を行います。1回の体外受精でたくさんの受精卵が得られた場合、余剰胚を凍結し、妊娠しなかった場合や次の子どもを望む場合に戻す方法もあります(凍結胚移植)。

自然妊娠を望む時は妊孕性を念頭に計画しましょう

 妊娠できる年齢にはタイムリミットがあります。また自分に妊孕性があっても、パートナーに妊孕性がない場合、妊娠は成立しません。体質によっては妊孕性が高い年代であっても自然妊娠が難しくなる場合があります。困った時や不安な時は、産婦人科医、特に生殖医療(不妊症)専門医にご相談される事をお勧めします。

 


主催|岐阜新聞社
後援|岐阜県医師会 岐阜市医師会 岐阜県産婦人科医会 岐阜市産婦人科医会